匿名組合契約と保険契約

法人税の節税手法は数多ありますが、比較的金額規模が大きなもの、かつ、組織再編等の特殊な手法を使わないとなるとやはり上位に来るのが匿名組合契約と保険契約でしょう。

今回はこれら2つについて法人税と株価評価の視点で簡単に見ていこうと思います。

法人税の節税効果と注意点

まず、法人税の節税効果ですが、匿名組合契約も保険契約もあくまでも課税の繰延効果になります。

要は匿名組合契約の場合は契約期間の初期に出資金額を上限に損出しが先行し、契約期間の後半になって益に転じてくる。

保険契約も契約期間中は支払保険料が損金算入され(損金算入割合は保険による)、解約時等に解約返戻金等が返ってくることで益がでる。

どうしても当期の法人税を節税したいという場面では、どちらも節税効果は高いですが、いずれ益になって戻ってくるので、その際にはまた新しい匿名組合契約、保険契約を結ばないと課税が起きるという具合になってきてしまいます。

とりわけ匿名組合契約の方が保険契約よりも金額感が大きい分、契約初期の節税効果も高いのですが、外貨建ての場合は為替リスク等もあり、最終的に益になって戻ってくるとはいえ、元本割れのリスクもありますのでやる際には注意が必要です。

会計処理や税務申告にも注意が必要です。保険については支払保険料の全額が損金か1/2が損金か等の会計仕訳を誤らないように、匿名組合契約については、法人税の別表9(2)を作成する必要があります。

株価評価における注意点

まず、類似業種比準価額の計算上の留意点ですが、非経常的な利益との絡みで注意が必要です。

匿名組合契約に係る損益は、毎期継続的に発生するものですので、「経常的」と判断され、非経常的な利益の集計上は考慮しないことになります。

一方で、保険解約差益(解約返戻金等-保険積立金)は、臨時偶発的で毎期継続的に発生するものではないので、「非経常的」と判断され、非経常的な利益の集計上考慮する必要があります。

次に、純資産価額の計算上の留意点ですが、どちらも課税時期における時価評価資料を入手する必要があります。

匿名組合契約については、リース会社に問い合わせて、課税時期における出資持分の評価額資料を取り寄せます。

保険契約については、保険会社に問い合わせて、課税時期における解約返戻金等の資料を取り寄せます。全損タイプの保険でBSに資産計上されていない保険でも解約返戻金等がある保険もありますのでもれなく資料回収する必要がありあます。

おわりに

匿名組合契約も保険契約もやるやらないの判断(意思決定)が最重要です。法人税の節税だけ考えて株価評価上の影響まで気が回らないということが無いように事前に契約後の効果を様々な角度から検討する必要があると思います。

そして、やる際には事後処理である会計処理・税務処理にも細心の注意が必要です。会計処理・税務処理を間違えて当初予定していた効果が得られないなんてことが無いようにしないといけません。

なお、大前提として、行き過ぎた節税のためだけにこれら匿名組合契約と保険が利用されることが無いようにという視点も忘れてはいけないと思います。

グループ経営における経営指導料のあり方③ 平12.2.3東京地裁を踏まえて

グループ経営における経営指導料のあり方と題して、以下の記事で書いてきましたが、今回が最終回になります。

今回の記事をいきなり読んでもよくわからないと思いますので、できれば以下の記事を読んだうえで今回の記事を読んでいただければと思います。

グループ経営における経営指導料のあり方① 平12.2.3東京地裁を踏まえて

グループ経営における経営指導料のあり方② 平12.2.3東京地裁を踏まえて

まずは、『平12.2.3東京地裁TAINSコード:Z246-8578(以下、裁判例という。)』における裁判所の判断から見ていこうと思います。

裁判所の判断

税務署の主張や納税者の主張については、私が思う重要なポイントをまとめてご紹介しましたが、裁判所の判断部分については、原文そのまま以下にきさいします。

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提供される役務が市場性を有さず、客観的な価格が形成されていない場合、また、提供される役務が様々な内容を含むため個々具体的な役務の提供に対する対価を個別に観念し難い場合、役務提供者において当該役務を提供するのに必要な費用の額(以下「提供経費」という。)をもって、当該役務の価値を判断する基礎とすることは合理的な方法ということができるが、提供者における利益ないし報酬の部分も役務の対価として含まれてしかるべきことからすると、提供される役務の価値が、提供経費に尽きるものではないことは明らかである。

特に、当該役務の提供が提供者の主たる活動になっている場合、提供した役務の価値が提供経費を大幅に上回る場合などにおいては、利益ないし報酬部分を加算しないことは不合理というべきである。

そして、独立企業間で役務の提供に対する利益ないし報酬部分をどのように定めるかは、私的自治の原則により基本的には当該企業が契約により自由に定めるところにゆだねられているものというべきである。

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つまり、税務署が主張した費用の積上げ方式(コストアプローチ的)な方法についても合理的ではあると配慮しつつも、付加価値部分(利益ないし報酬部分)も含まれるべきとしており、その付加価値部分の決め方は、基本的には契約による(私的自治の原則)としています。

ただし、なんでもかんでも契約で決めさえすれは、税務上なんの問題もない(寄付金認定リスクなし)というわけではなく、裁判所は以下のように続けています。

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提供される役務に対して支払われる対価の額が、役務提供者における提供経費を超えているからといって、当該超える部分が直ちに寄付金に該当すると速断することはできず、

右超える部分が寄付金に該当するかどうかは、契約当事者である企業間の関係、当該役務提供契約において定められている役務の内容、対価の決定方法の合理性、実際の役務提供内容、提供される役務の被提供者における便益の大きさ、役務と右便益との関係の直接性、提供者において当該役務の提供がその業務に占めている地位等に照らして、

役務の提供の対価が、独立企業間において行われる同種の契約で設定される対価の水準と著しく乖離していて企業間の特殊な関係に基づく租税回避のための価格操作と認めるべきものかどうかによって、これを判断すべきものと解される。

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寄付金該当性の判断ロジックとして、中段に記載の各種様々な事実認定を踏まえて、最後の、企業間の特殊な関係に基づく租税回避のための価格操作と認められるかどうかで判断するというところは、私個人的にも納得なのですが、その前文の、役務の提供の対価が、独立企業間において行われる同種の契約で設定される対価の水準と著しく乖離していて、というところは実務上判断が困難なケースが多いと思いました。

そのそも、提供される役務が市場性を有さず、って裁判所もはじめにいっているとおり、問題となっている親子会社間の経営指導契約と同種の契約がなく、対価水準が不明なんじゃないの?という疑問がわいてきますし、実務上もそういったケースがほとんどだと思います。

ただし、今回の裁判例については、この独立企業間において行われる同種の契約があるんですね。具体的には、NPCがPKKに完全支配される前、松下電器産業との合弁であった時代に、FOB価格×1%、インボイス価格×0.5%といった算式で計算された金員をNPCから松下電器産業に支払う契約が結ばれていたんです。

そういうこともあり、各種事実認定を行った上で、独立企業間において行われる同種の契約の存在もあり、企業間の特殊な関係に基づく租税回避のための価格操作と認めるべきような不合理なものということはできないとして、寄付金に該当する部分無し(納税者の勝ち)となっています。

おわりに

以上、裁判所の判断部分を見てきましたが、経営指導料の寄付金該当性の判断ロジックとしては、主に以下の3点を検討したうえで最終判断がなされています。

①各種事実認定(契約の存在、実際の役務提供の内容など)

独立企業間において行われる同種の契約で設定される対価の水準との乖離の程度

企業間の特殊な関係に基づく租税回避のための価格操作の有無

今回の裁判例を踏まえて、例えば実際に経営指導料の仕組みを導入することを検討する場合、①③は企業側の努力次第でいくらでも検討できそうですが、②については情報収集に限界があるのではないかと個人的に感じているところです。

②に直接代わる検討方法ではありませんが、税務署の主張にある費用の積上げ方式で経営指導を提供するのに要する費用がどの程度かを把握し、その積上げ費用と経営指導料の乖離の程度を検討するのも一法なのではないかと思っています。

費用の積上げ方式の金額 > 経営指導料 の場合、子会社側での経営指導料の寄付金該当性というよりも、親会社側で経営指導料の計上漏れ(回収不足)の指摘を受ける可能性もありますので。

あと、この裁判例の時代はありませんが、今は100%関係の場合、グループ法人税制がありますので、寄付金に該当した場合のグループ法人税の取扱いも検討していかないといけませんね。

経営指導料をめぐってはまだまだ私自身検討すべきことが多いテーマの1つなのでまた別の記事にでもしてアップしていこうと思います。