類似業種比準価額計算上の留意点|非経常的な利益金額|

相続税、贈与税の財産評価上、取引相場のない株式(非上場株式)の評価方法は大きく①原則的評価方式(類似業種比準価額、純資産価額)、②特例的評価方式(配当還元価額)に分けられます。

今回は、①原則的評価方式のうち類似業種比準価額の計算上の留意点についてのお話です。

類似業種比準価額の計算式

まず、類似業種比準価額の計算式がそもそもどうなっているかですが、以下の通りです。

出典:国税庁HP『平成29年6月13日 類似業種比準価額計算上の業種目及び類似業種の株価等の計算方法等について(情報)別添目次1類似業種株価等通達の趣旨』第1項

算式中、A、B、C、Dは国税庁から公表される標本会社(上場企業)のデータを用いますので、こちら(税理士や納税者)の方で計算必要なのは、Ⓑ、Ⓒ、Ⓓの部分になります。

非経常的な利益金額の計算

上記Ⓑ、Ⓒ、Ⓓのうち、一番注意が必要なのが、Ⓒの利益金額のところです。そしてこのⒸの計算上、非経常的な利益金額はマイナスすることになっています。趣旨は、会社本来の経常的な利益ベースで株価評価を行おうというものです。

肝心の非経常的な利益金額は、固定資産売却益、保険差益等の非経常的な利益の金額から非経常的な損失の金額を控除した金額(負数の場合は0)となります。

ですので、非経常的な利益金額を計算するには、非経常的な利益と非経常的な損失を集計する必要があるのですが、実務上はこれをどう集計するかがポイントです。

以下、私が思うポイントを簡単に記載します。

【非経常的な利益、損失の集計上のポイント】

ポイント 内容
PLの営業外損益、特別損益項目以外も確認 非経常的ということでPLの営業外以下の項目に目が行きがちですが、そもそも非上場の中小企業の経理上科目使い分けのルールがあいまいな場合もままあるので、販管費などでも臨時巨額な金額がないか念のためチェックする。
別紙4の加減算項目も必ず確認 そもそもⒷの計算は、会計上の当期純利益ベースではなく、法人税の課税所得ベースで行われるため、PLだけではなく、必ず別表4の加減算項目もチェックする必要がある。

別表4の加減算項目も必ず確認についてもう少し具体例を交えて補足すれば、例えば、PL雑収入に過年度法人税の還付金が計上されていた場合、これを非経常的な利益として集計するとⒷの計算上マイナスされてしまいますが、別表4で既に当該還付金が減算処理されている場合、同じ金額を2重でマイナスしてしまう結果になってしまうということです。

おわりに

他にもⒷの計算上留意しなければならない論点については、国税庁HPの質疑応答集や市販の専門書籍にものっていますが、また別の機会に書くとします。いずれにしても、取引相場のない株式のひょうかというと、どうしても手間のかかる純資産価額の計算に目が行きがちですが、類似業種比準価額の計算も意外と侮れない論点が多いです。

また、税理士試験でも取引相場のない株式の計算問題は出ますが、流石に計算につかう金額は問題に与えられます。しかし、実務だと各種様々な資料の収集から始まりますので、試験勉強と実務の難易度ギャップが大きな仕事の1つだと思います。もちろん基礎知識あっての実務ですので、試験勉強が生きることは間違いないですが。

 

取引相場のない株式の評価から見えてくること

「取引相場のない株式の評価」という書き方をするとなんだか難しく思われる方もいるかもしれませんが、財産評価基本通達に基づく非上場株式の評価のことです。

財産評価基本通達というのは、相続税や贈与税の財産評価に関するルールブックのようなものであり、土地、家屋、取引相場のない株式など、各種様々な財産の評価方法が画一的に規定されています。

取引相場のない株式の株式の評価は大変

話を取引相場のない株式の評価に戻しますが、これを一度でも実務でやったことのある方ならわかると思いますが、ほんとに大変な仕事です。

取引相場のない株式の評価方法には、①原則的評価方式と②特例的評価方式(配当還元方式)の大きく2パターンに分かれてまして、①原則的評価方式では類似業種比準価額と純資産価額の計算が必要になります(ちなみに、会社規模区分が大会社なら純資産価額計算不要では?と思われる方もいるかと思い、補足しますと、株式保有特定会社や土地保有特定会社になる可能性を検討する上で純資産価額の計算が必要という意味です)。

類似業種比準価額も簡単なようで意外と難しい論点があるのですが、手間がかかるのは純資産価額の方です。

純資産価額の計算をするには、会社の全資産負債について財産評価基本通達に基づき評価していかなければなりませんので、例えば、その評価対象会社が土地をたくさん所有していたらそれを全部財産評価基本通達で評価しないといけないし、非上場の子会社株式を1社保有していれば、それも財産評価基本通達で評価しないといけませんので結果2社分の評価が必要になります。

大変だけど見えてくるものもたくさんある

以上のように、取引相場のない株式の評価(特に原則的評価方式の純資産価額)は非常に大変な仕事なのですが、その評価対象会社の全資産負債について評価するのあたり、様々な情報を収集しますので、いろいろと見えてくるものがあります。

例えば、会社所有の建物を賃貸している場合、貸家の評価減、貸家建付地の評価減の通達適用にあたり賃貸面積を調べるために、建物賃貸借契約書の確認が必要になります。ですが、建物賃貸借契約書がないなんてことがあります。どんな場合に契約書がないのかというと、例えば、親会社と子会社の契約とか、会社とオーナーの契約などが代表例です。

第三者とであれば当たり前にかわす契約書が、近しい関係にある会社や人との契約だと口頭で済まされていることがままあります。

もちろん口頭でも契約(申込と承諾)はできますが、上記のようにその土地を評価しようと思ったときに客観的情報としての契約書が得られず、正しく評価額を算出できないという問題が生じます。

見えてきた問題点は指摘

以上のように、取引相場のない株式の評価(純資産価額の評価)を通じて、会社に当然あるべき契約書がないなんてことがあります。

そして、契約書がない場合は株価評価をどうするかという論点はありますが、そういった状況に気が付いたら評価を担当した税理士は会社に当該事項を指摘・説明する必要があると思っています。

私自身も単に評価額は○○円でしたで終わるのではなく、評価の過程で気が付いた点はしっかり指摘・説明していきたいというスタンスで株価評価業務は行っています。株価評価業務は非常に大変な仕事ですが、その会社のことがよくわかるいい機会でもあると思っています。