不動産 相続税

地下埋設物のある土地の評価にあたり養生費用の控除すべきとの納税者の主張が認められなかった裁判例(平成15年2月26日東京地裁)

はじめに

今回は、原告(納税者・相続人)が、相続した不動産(貸家及びその敷地)の土地の評価額について、地下埋設物が存在するためその養生費用相当額を控除すべきと主張したが認められなかった裁判例(平成15年2月26日東京地裁TAINSコード:Z253-9292)(一部取消し)(確定)ご紹介します。

事例概要

本件は、地下埋設物のある土地以外に他土地1件と取引相場のない株式の評価についても争っていますが、そこは省略して、地下埋設物のある土地の評価に関する部分だけ概要を以下にご紹介します。

✔原告は、被相続人(相続開始:平成6年6月27日)より地下埋設物のある人形町の土地建物を取得。

✔本件人形町の土地上には、被相続人は所有する貸家の用に供されていた(いわゆる貸家建付地)。

✔本件人形町の土地の自用地価額(路線価方式・貸家建付地の評価減前)は、363,617,100円(3,267,000円/㎡)

✔本件人形町の土地の近隣地価公示価格が平成6年1月1日から平成7年1月1日までの1年間で32.9%下落しており、評価通達によるべきでない特別の事情有り。

✔被告(国)は上記特別の事情を踏まえ、不動産鑑定基準に基づき本件人形町の土地の更地価格を、300,500,000円(2,700,000円/㎡)と評価した。なお、被告(国)は比準価格と収益価格を両方試算しているものの、収益価格は賃料収入や還元利回り等の把握について、推定的判断を余儀なくされるため、規範性に欠ける面を有する等の難点を指摘し、比準価格を採用している。

✔原告(納税者)も、不動産鑑定評価を実施し、本件人形町の土地の更地価格を、262,334,100円(2,357,000円/㎡)と評価した。

原告(納税者)の主張

原告(相続人)は本件人形町の土地の評価額について、上記に記載の不動産鑑定評価額を主張しつつも、さらに地下埋設物の存在を考慮して、養成費用を控除すべき旨主張している。

本件人形町の土地は、戦後に埋め立てられた土地であるため、地中には石垣等の地中埋設物が存在し、約2メートル掘削すれば水が湧出する状態である。

したがって、土地を売却後再建築するためには、養生費用の支出を免れることができない(買主から養生費用分の差し引きを要求されるために評価が低いことは、地元では周知の事実となっている。)。この養生費用は、6メートルで3000万円から3500万円程度、10メートルで5000万円から6000万円程度が必要であるから、本件人形町の土地は、比準価格等から求めた価格から、さらにかかる費用を差し引いた価額が適正な時価となる。

出典:平成15年2月26日東京地裁TAINSコード:Z253-9292 原告の主張より抜粋

被告(国・税務署)の主張

上記のような原告の主張に対して、被告は以下のとおり、地下埋設物に係る養成費用を控除すべきでないと主張しています。

さらに原告らは、本件人形町の土地は、比準価格等から求めた価格から、養生費用を差し引いた価格が、適正な時価となる旨主張する。

しかし、本件相続の開始時点における本件人形町の土地の現況は、周辺の土地と同様既に建物が建てられ、その敷地として利用されているのであり、近隣の埋立地以外の土地と比較しても利用上の制約及び法令上の差異があるものとは認められない。仮に、そうした費用が真に必要なものであるとしても、それが本件人形町の土地の時価にいかなる影響を及ぼすのかが具体的に明らかではなく、原告らの主張は失当といわざるを得ない。

出典:平成15年2月26日東京地裁TAINSコード:Z253-9292 被告の主張より抜粋

裁判所の判断

本件人形町の土地の評価額について、裁判所は比準価格と収益価格を共に重視し、両者の平均値として、更地価格を求めており、被告の主張する更地価格よりも低い価格とはなっています。

ただし、本件人形町の土地の評価にあたり、地下埋設物に係る養成費用を控除すべきか否かについて、裁判所は以下の通り述べ、養成費用を控除すべきでないと判断しています。

以上に加えて、原告らは、本件人形町の土地には地中埋蔵物があるため、土地を売却して新たに建物を建てるためには、養生費用が必要となるとして、本件人形町の土地の更地価格から養生費用を差し引くのが相当である旨を主張する。

しかし、原告らの主張が認められるためには、地中埋蔵物の存在によって、一般の取引通念上、本件人形町の土地の取引価格が減額されることが必要となるところ、本件人形町の土地が埋立地であり、地下に埋蔵物が存在することは認められるものの(甲22の1、23、25、44)、本件人形町の土地には、本件相続開始当時において、その土地上に鉄骨造2階建の車庫付き事務所兼倉庫が建てられていたこと(乙10)に照らせば、本件相続開始時において、上記事情が、本件人形町の土地の価格を一般に減額させるものであるか否かが明らかでないといわざるを得ない。また、原告らは、本件人形町の土地と同様に、地価に埋蔵物がある土地の売買に際し、売主が、買主に対し地価埋蔵物の撤去義務及び瑕疵担保責任を負う旨の特約のある契約が締結された旨の書証(甲24)を提出するが、当該契約の対象地においては埋蔵物の質及び量が本件人形町の土地と同程度のものであるか否かが明らかでない以上、これによって本件人形町の土地を処分する際にも同様の約定が合意されるか否かは明らかでないといわざるを得ない。

したがって、原告らの上記主張は、これを採用することができない。

出典:平成15年2月26日東京地裁TAINSコード:Z253-9292 裁判所の判断より抜粋

筆者コメント

上記裁判所の判断部分のうち個人的に重要だと思う部分を緑色にしています。

本件人形町の土地には、地下埋設物が現に存在する点は上記の通り裁判所も認めていますので、養成費用を控除しても問題ないのではないかと思われる方もいるかと思います。以前私の事務所HPでも産業廃棄物が埋まっている土地の評価に関する記事(産業廃棄物が埋まっている事実が明らかな場合には除去費用の80%相当を控除する旨)をアップしています⤵

相続した土地に産業廃棄物が埋まっていた場合の土地評価

ただし、上記記事で紹介しているのはあくまでも建物が存在しない更地の事例ですが、本件人形町の土地は、被相続人の貸家た建っており、被告や裁判所も貸家建付地の評価減を行っていることから現に賃貸中(稼働中)であることが読み取れます。このように課税時期において現に稼働中の貸家が建っている敷地を評価するにあたっては、建物の存在を無視するわけにはいきません。

不動産鑑定評価基準でも、貸家及びその敷地のような土地建物一体の類型(建物及びその敷地)に関しては、①現況の建物利用の継続、②建物の用途変更・構造改造等、③建物取壊しのうちいずれが最有効使用かを判定する必要があります。

本件では、③建物取壊しが最有効使用と判断されるのであれば、現況建物を取り壊し、新たに最有効使用の建物の建築を想定することを意味しますので、原告(相続人)のいうように養成費用を控除する余地も出てくると思いますが、少なくとも本文を読む限りでは③建物取壊しが最有効使用とは判断されないと考えられます。現況稼働中の貸家の場合、建物取壊費用だけでなくテナントへの立退料も考慮する必要がありますので、③建物取壊しが最有効使用と判定するのは自用の建物に比べて一般的にもハードルが高いです。

本件を通じて、「地下埋設物が存在する土地=除去費用(の80%)を控除できる」という思い込みは危ない点が理解いただけるかと思います。

現に地下埋設物が存在していても、その除去費用が顕在化しない場合(例えば本件のように既に建物が建っており、現況建物の利用の継続が最有効使用と判断されるような場合)もありますので注意が必要です。

 

 

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