相続税

相続税の債務控除における連帯債務の取扱い ~各連帯債務者の負担部分・負担割合の判断基準~

はじめに

今回は相続税の債務控除における連帯債務の取扱いを少し掘り下げたいと思います。

連帯債務とは

連帯債務とは、複数の債務者が同一の可分給付についてそれぞれ独立して全部の給付をすべき債務であって、債務者の一人がその給付をしたときは全ての債務者の債務が消滅するものであるとされています。

また、平成29年(2017年)改正前民法432条からは、どのような場合に連帯債務が発生するか明確ではありませんでいた。これを受け、改正民法436条では「債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するとき」と定められ、連帯債務は、法律の規定によるほか、当事者の意思表示によって成立することが明確化されました。当事者の意思表示としては、契約(当事者の合意)であることが通常です。不動産との関係では、住宅ローン契約における連帯債務や、賃貸アパート建築に充てるための建築資金借入における連帯債務などが挙げられます。

相続税法基本通達14-3(相基通14-3)の取扱い

相続税の債務控除における連帯債務の取扱い(条文解釈)は相基通14-3に以下の通り規定されています。

①連帯債務者のうちで債務控除を受けようとする者の負担すべき金額が明らかとなっている場合

 当該負担金額を控除する

②連帯債務者のうちに弁済不能の状態にある者があり、かつ、求償して弁済を受ける見込みがなく、当該弁済不能者の負担部分をも負担しなければならないと認められる場合

 その負担しなければならないと認められる部分の金額も当該債務控除を受けようとする者の負担部分として控除する

 

普通に読むと特に疑問を抱かずスルーしてしまいそうですが、上記①の「連帯債務者のうちで債務控除を受けようとする者の負担すべき金額が明らかとなっている場合」とは具体的にどういう場合をいうのか?皆さん判断つきますでしょうか?

明確に連帯債務者間で負担割合・負担金額の特約(合意)があり、それが書面で残っている場合にはよいですが、実務上こうした特約(合意)がない場合も多いです。こうした特約(合意)がない場合はどう判断すべきでしょうか?

この点、以下国税不服審判所の公開裁決例で1つ考え方が示されています(緑色は筆者強調)。

〔裁決の要旨〕
原処分においては、本件借入金は被相続人と受遺者(被相続人の孫)との連帯債務であるとし、その負担割合は被相続人と受遺者とが等分であつて、当該借入金につき相続税の課税価格の計算上債務控除すべき金額は、当該借入金の2分の1相当額であるとしているが、一般に連帯債務者間の負担部分は当該債務者の特約(合意)によつて定まるのであるが、特約がないときは連帯債務により受けた利益の割合によつて定まり、なおこれによつても定まらないときには各自が平等の割合により負担するものと解されるところ、本件の場合は、連帯債務者間において負担部分に関する特約は認められないが、当該借入金の運用状況をみると、すべて被相続人が運用し、その運用で得た財産はほとんどが相続財産として申告されており、また、受遺者が運用した事実は認められず、実際に連帯債務による利益を享受したのは被相続人であると認められるから、当該借入金の全額は、被相続人の債務として債務控除するのが相当である。

出典:国税不服審判所 S57.1.14公開裁決 TAINS:J23-4-01

上記緑色の部分(負担割合について特約(合意)がない場合の考え方)について、裁決本文を読んでも審判所がどこから引用したのか明記されていませんが、以下書籍に同趣旨の解説がありますのでご紹介します。

負担部分の割合を決定する標準については、民法に規定がない。しかし、第1に、債務者間の特約によって定めることができることには疑いがない。債権者との合意も必要としない(大判大正4・4・19民録21輯524頁)。第2に、特約がなくても、連帯債務によって受けた利益の割合が異なれば、負担部分もまたその割合に従うのが妥当である。たとえば、B・C・D連帯で借りた300万円のうち、Bが200万円、Cが100万円を消費すれば、B・C・Dの負担部分は、2・1・0の割合と考えてよい。第3に、この二つの標準で定まらない場合には、各自平等の割合と考えてよい。これが、共同分担の最後の標準としては公平に適するからである(大判大正3・10・29民録20輯834頁)。

出典:我妻榮・有泉享・清水誠・田山輝明著「第7版 我妻・有泉 コメンタール民法 総則・物権・債権」(2021年,㈱日本評論社,870頁)

おわりに

なお、最後に余談ですが、平成29年(2017年)民法改正時の部会資料等を読んでみると、連帯債務者間の求償に関する紛争を防止するため,連帯債務者間の負担割合についての以下のような推定規定を新たに設けるかどうかについても検討されていたようですが、最終的に、改正民法では条文化されていません。

イ 負担割合
(ア) 対外的な負担割合(債権者との関係)
連帯債務を負担する数人の債務者は,債権者と各債務者との間に別段の意思表示がない場合には,債権者との関係において,それぞれ平等の割合で自己の負担部分を有する旨の規定を設けるものとしてはどうか。
ただし,債権者と各債務者との間に上記別段の意思表示がない場合において,債権者が,当該連帯債務の成立当時,後記(イ)の各債務者間の別段の意思表示の存在及び内容を知っていたときは,各債務者は,債権者との関係において,当該各債務者間の別段の意思表示による割合で自己の負担部分を有する旨の規定を設けるものとしてはどうか。
(イ) 内部的な負担割合(各債務者間の関係)
連帯債務を負担する数人の債務者は,各債務者間に別段の意思表示がない場合には,各債務者間の関係において,それぞれ平等の割合で自己の負担部分を有する旨の規定を設けるものとしてはどうか

(中略)

本文(イ)(内部的な負担割合-各債務者間の関係)について連帯債務者の内部的な負担割合についても,この補足説明1で述べた連帯債務者の対外的な負担割合の場合と同様に,平等分割の原則が妥当し,連帯債務を負担す
る数人の債務者は,各債務者間に別段の意思表示がない場合には,各債務者間の関係において,それぞれ平等の割合で自己の負担部分を有すると解されている。本文イ(イ)は,この理解を前提として,連帯債務者の内部的な負担割合に関する平等分割の原則を条文上も明らかにすることを提案するものである。

出典:法務省HP「民法(債権関係)部会資料 36 」6頁~7頁