不動産 相続税

鉄道走行による騒音振動がある土地の評価で、利用価値が著しく低下している宅地の10%減額が認められるか否かが争われた事例(公表裁決 R2.6.2)

はじめに

本件は、請求人(相続人)が被相続人(平成27年2月相続開始)から相続により取得した本件土地の相続税申告における評価について、利用価値が著しく低下している宅地の10%減額が認められるか否かが争われた裁決例です(公表裁決 R2.6.2)。

利用価値が著しく低下している宅地の10%減額の取扱い

利用価値が著しく低下している宅地の10%減額の取り扱いは、以下国税庁HPタックスアンサーにもあるのでご存じの方も多いかと思います。

国税庁HPタックスアンサー『No.4617 利用価値が著しく低下している宅地の評価』

鉄道等の騒音についてこの取り扱いにより10%減額が認められる要件を抜き出せば以下の3点になります。

要件1:その騒音を考慮して路線価が付されていないこと

要件2:騒音が生じていること

要件3:その騒音が生じていることにより取引価格に影響を受けると認められること

本件では、特に要件3について、以下請求人の主張、原処分庁(税務署)の主張、審判所の判断を取り上げます。

請求人の主張(要件3について)(下線は筆者)

本件土地の存する地域は、周辺に戸建住宅が多く見られる地域であることから、騒音が土地の価格にマイナスの影響を及ぼすのは明らかであり、地元の不動産業者からのヒアリング結果でも、鉄道沿いでない土地と比べて10~15%価値が下がるという報告がある。また、本件土地の周辺の鉄道沿いの土地では、実際に、利用用途の制限や建物のレイアウトの自由度の低下、防音対策費用の発生など、様々な土地の利用価値の低下が生じている。

a市では、宅地の固定資産税評価額の決定に当たり、鉄道騒音に対する減価補正(鉄道騒音補正)が定められているところ、本件土地の平成27年度の固定資産税評価額は、鉄道騒音補正として鉄軌道中心線からの最短距離が10m以内である場合の0.90の補正率を適用して計算されており、同市は、本件土地について、鉄道騒音により利用価値が低下していると判断したものである。そうすると、相続税の評価額においても、固定資産税評価額と同様に、鉄道騒音による価値下落の影響をしんしゃくすべきである。

請求人の主張では、地元不動産業者からのヒアリング及び固定資産税評価額の補正率を根拠に要件3を充足すると述べています。

原処分庁(税務署)の主張(要件3について)(下線は筆者)

本件土地の取引金額が、付近の宅地の取引金額に比べ、鉄道騒音による影響を受けていることについて、請求人から具体的な主張はなく、そのような事実は確認することができない。

本件取扱いにより減額することができる宅地は、騒音等により取引金額に影響を受けると認められるものに限られるところ、固定資産税評価額の決定における鉄道騒音補正は、鉄軌道中心線から一定の範囲内に所在することを要件として、その距離に応じて画一的に適用されるものであるから、本件土地に鉄道騒音補正が適用されていることをもって、本件土地の取引金額が鉄道騒音による影響を受けていることにはならない。

原処分庁は、請求人の主張では要件3の取引金額へ影響しているとは言い切れない旨反論しています。

審判所の判断(要件3について)(下線は筆者)

上記のとおり、本件土地の所在するa市及び隣接するR市においては、補正率の算出方法は異なるものの、いずれも鉄軌道中心線から30mの範囲内の土地について、固定資産評価基準に定められた所要の補正の一つとして、鉄道騒音により土地価格が低下することを固定資産税評価額に反映させるための減価補正が設けられ、しかも、d鉄道e線が当該補正の対象とされているのであって、現に、本件土地の固定資産税評価額については、d鉄道e線の鉄軌道中心線から10m以内に存する場合の0.90の鉄道騒音補正率を適用して算定されていることが認められる。

そして、固定資産評価基準は、市町村長が、固定資産の価格、すなわち、適正な時価(地方税法第341条《固定資産税に関する用語の意義》第5号)を決定する際の客観的かつ合理的な基準であると認められるところ、このような固定資産評価基準における所要の補正の趣旨に照らせば、a市及びR市においては、d鉄道e線の列車走行により発生する騒音が、鉄軌道中心線から30mの範囲内の土地の価格低下の要因となっており、その価格事情(鉄道騒音)が、当該土地の価格に特に著しい影響を及ぼしているものと認められる。

さらに、上記のとおり、本件土地は、d鉄道e線の線路敷から約10mから30mまでの範囲内に位置していることから、その地積全体について、d鉄道e線の鉄道騒音によりその取引金額が影響を受けていると認めるのが相当である。

審判所は、請求人の主張と同じく、本件土地の固定資産税評価額の補正率及び固定資産税評価基準の趣旨を根拠に要件3を充足すると判断しています。なお、他の要件1,2に関しても充足すると判断され、請求人の主張が認められています。

私見とコメント

類似事例(鉄道走行による騒音振動がある土地の評価で、利用価値が著しく低下している宅地の10%減額が認められるか否かが争われた事例(非公開裁決 H15.11.4 TAINS:F0-3-402))では、請求人と審判所は以下の通り鉄道沿いの分譲区画とそれ以外の分譲区画の分譲価格差を根拠に要件3の適用可否を判断しています。

■■■■■分譲地は、■■■■■沿線にある■■■■■■■■■■■■に所在し、その分譲価額によれば、線路沿いの区画においては坪単価が58.8万円、次の区画が63.9万円、その次の区画が67.9万円となっており、その格差は9.1万円で率にすると13.4%であり、隣接する分譲地においても線路沿いの区画が49.3万円、次の区画が54.3万円、その次の区画が55.8万円で、その格差は6.5万円の11.6%となっている。  

要件3の取引価格への影響を判断するにあたり、本件のように鉄道騒音を考慮した固定資産税評価額の補正率の存在で果たして足りるのか?個人的には疑義が残っています。

上記非公開裁決のように分譲価格差を基に要件3を判断している事例と比較すると、本件の固定資産税評価額の補正率を基に要件3を判断するのは、個人的には説得力がやや不足しているのではないかと思います。

とはいえ、一応公表裁決ですので、要件1,2を充足することは確認できたけれども、要件3の判断に際して非公開裁決のような分譲価格差の資料が入手できない場合は、鉄道騒音を考慮した固定資産税評価額の補正率が適用されているかどうかを確認するのも一法かとは思います。。。