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新型コロナの影響による地価下落で相続税路線価の下方修正はあるか?

はじめに

令和2年度の相続税路線価が国税庁より7月1日に公表されましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により地価が下落した場合には相続税路線価を下方修正する旨の検討が国税庁でなされているとの報道が話題を呼びました。

今週の税務通信3612号でも相続税路線価の減額補正に関する解説記事がでており、参考になります。

今回は、果たして本当に相続税路線価の下方修正(減額補正)はあり得るのかについて私見を述べていこうと思います。

相続税路線価とは

本題に入る前に、少しは前提知識として相続税路線価とは何かについて少し触れておこうとおもいます。

相続税の財産評価基本通達では、土地の地目ごとにそれぞれ評価方法が規定されていますが、宅地については、市街地的形態を形成する地域にある宅地は路線価方式で、それ以外の地域にある宅地は倍率方式で評価することとされています(評価通達11)。

路線価方式では、相続税路線価をベースとして画地条件等に応じた加算又は減算(減算の取扱いが多い)を行い評価します(評価通他13)。

この相続税路線価は、平成4年の税制改正大綱にて、それまでの公示価格水準の7割から8割へ引き上げることとされ、現在に至っています。相続税路線価が公示価格水準の8割であることの根拠としては、評価の安定性(評価通達による評価額が相続税法22条の時価を上回らないようにすること)及び他の財産の評価との中立性(現預金等の他の財産の評価額と比べて土地だけ有利であったりしてはならず、バランスがとれていること)が挙げられています。

以上のような背景・趣旨を踏まえ、相続税路線価は毎年1月1日時点の価格(公示価格水準の8割程度)を国税庁が、毎年7月に公表しています。新型コロナウイルス感染症の影響が大きく取りあげられるようになったのは令和2年の2~3月頃からなので、今回公表された令和2年1月1日時点の相続税路線価には新型コロナウイルス感染症による影響は加味されていないというわけです。

地価下落による相続税路線価の下方修正のイメージ

税務通信3612号によれば、「国税庁においては,9月頃に国土交通省が公表する「都道府県地価調査」(7月1日時点の地価)の状況や,外部の事業者に調査を委託するなどして広範な地域で大幅な地価の下落が確認された場合などには,本年10月頃以降に,令和2年分の路線価を減額調整する“補正率”の設定などを幅広く検討する方向」とのことです。

現在日本では、地価公示法に基づき国(国土交通省土地鑑定委員会)が毎年1月1日現在の公示地価を3月下旬に公表していますが、もう1つ国土利用計画法に基づき都道府県が毎年7月1日現在の基準地価を9月に公表しています。

この9月に公表される基準地価の評価時点は令和2年7月1日なので、令和2年2~3月以降に大きな影響が出てきた新型コロナウイルス感染症の影響は加味されることとなります。よって、この基準地価の状況が、相続税路線価の下方修正にあたって1つ大きなポイントとなります。

この基準地価も求める価格水準は公示地価と同じですので、公示地価水準に比べた基準地価水準の下落率が20%以内であれば、以下の図の通り、相続税路線価が時価(基準地価水準)を上回ることはないので、相続税路線価はそうままで下方修正はなしとなります。

公示地価水準に比べた基準地価水準の下落率が20%以内のケース

一方で、公示地価水準に比べた基準地価水準の下落率が20%以上の場合には、以下の図の通り、相続税路線価が時価(基準地価水準)を下回ることとなり、相続税路線価の下方修正が行われるとなります。

公示地価水準に比べた基準地価水準の下落率が20%以上のケース

もっとも、公示地価の調査地点と基準地価の調査地点は異なりますので同じ地点での下落率というよりは、地域的な目線でみての地価の下落率をみる必要があるので、基準地価の動向以外に、外部の業者に調査委託するとなっているのだと思います。ちなみに、この外部業者はおそらく、一般財団法人 日本不動産研究所(不動研)で間違いないかと思います(過去の財産評価基本通達の改正時の調査等も不動研に調査委託されていますので)。

相続税路線価の下方修正の可能性は?(私見)

ということで、実際に相続税路線価が下方修正されるか否かについては、少なくとも9月の基準地価の公表を待たないと正確にはわかりませんが、現時点では、令和2年1月1日~4月1日までの地価動向を示した国土交通省公表の地価LOOKレポートが1つ参考になると思います。

国土交通省HP:「地価LOOKレポート【第50回】 令和2年第1四半期 (令和2年1月1日~令和2年4月1日)の動向 」https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001348978.pdf

こちらみていただくと、全国的にみて、前年よりも上昇傾向は鈍化しているものの、東京都区部をはじめとして未だ緩やかな上昇傾向又は横ばいのところが多く、少なくとも20%以上下落しているような地点は見て取れませんでした。ということで、あくまでも個人的な感想では、今年9月公表の基準地価水準が公示地価水準に比べて20%以上下落する可能性は低い、すなわち、相続税路線価の下方修正の可能性は低いのではないかと思っています。

かなりエリアを限定して詳細な調査を実施した結果、20%以上の下落が認められるエリアがあるかもしれませんが、エリア的な地価下落概念ではなく、土地+上物の建物も含めた個々の不動産ごとに見ていかないと20%以上の下落幅はないのかなといった思いです(それこそ不動産鑑定評価の世界です)。

また、過去バブル崩壊やリーマンショックの時も相続税路線価の下方修正は行われていないことからも今回に限ってやるかな?といった懐疑的な感覚ではいます。

ただし、税務通信にも記載がありますが、相続税路線価の下方修正は来年3月の公示地価の動向も見て複数回にわたり検討実施される方向とのことですので、令和2年7月~12月までに更なる地価下落があればまた下方修正の可能性も高まるかとは思いますが。。。

なお、この地価LOOKレポートと先にご紹介してきた地価公示、都道府県地価調査との比較表を以下に抜粋しておきます。私個人的には、年2回公表される公示地価と基準地価を補完する地価動向を調べる情報として捉えています。

出典:「地価LOOKレポート【第50回】 令和2年第1四半期 (令和2年1月1日~令和2年4月1日)の動向 」70項

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