相続税

相続開始後に清算した会社に対する貸付金の相続税評価額(平21.3.16裁決)

今回は、相続税開始後に清算した会社に対する貸付金の相続税評価額について争われた裁決事例「平21.3.16裁決 TAINSコードF0-3-245」を読んだので、その備忘録として以下実務上の留意事項をまとめました。

貸付金の相続税評価額

いきなり裁決事例の内容に入る前に、一度貸付金の相続税評価額の求め方を財産評価基本通達で確認しておきます。

上記の通り、原則は返済されるべき金額で評価されますが、債務者が一定事由に該当する場合に例外的に回収困難な金額を控除できることとされています。

裁決事例の概要

今回の裁決事例の争点はシンプルで、被相続人が甲社と乙社の2社に対して有していた貸付金の相続税評価額が争われています。

ちなみに、被相続人は甲社、乙社の代表者であり、かつ100%株主です。甲社、乙社は不動産貸付業を営む法人で、代表者以外に従業員はいません。

今回の裁決事例で特徴的なのは、相続開始時から相続税の申告期限までの間に債務者である甲社、乙社が清算している点です(裁決本文では清算日がマスキングされており正確には不明なのですが、審判所の判断部分に、「本件相続に係る相続税の申告期限までに本件各法人を清算したとしても」との記載がありましたので、そのように推測してます)。

時系列を図にすれば以下の通りです。

なお、貸付金の相続税評価額にあたり、財産評価基本通達205の例外規定の適用可否を判断するうえで、債務者法人の事業状況を見る必要があります。

ただし、裁決の添付資料ではBS、PLの金額部分がマスキングされてしまっており読めませんので、審判所の事実認定部分の文章を参考に私がポイントをまとめたものを以下に示します。

審判所の判断

細かい点は省略しますが、納税者の主張は清算後に回収できた金額で評価(財産評価基本通達205例外規定)、税務署の主張は返済されるべき金額で評価(財産評価基本通達204原則)です。

審判所の判断としては、税務署と同じく返済されるべき金額で評価でした(納税者の負け)。

審判所の判断のポイントとしては、財産評価基本通達205例外規定の適用可否に関して以下の通り述べ、適用なしとしています。

本件各法人は、いずれも債務超過の状態が相当期間継続していたとはいえないばかりか、事業も順調で、営業状況、資産状況が破綻していることが明白であるといえるものではなく、弁済不能の状態にあったとは認められない。

そうすると、本件貸付金については、評価通達205の「その他その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」には該当しないというべきである。

出典:裁決事例「平21.3.16裁決 TAINSコードF0-3-245」審判所の判断部分より抜粋

そして、相続開始後に各社が清算している点については、財産評価基本通達205にも「課税時期において」と定められているので、改めて言うまでもないのですが、審判所の以下の通り述べ、考慮できない旨を念を押ししています。

そもそも回収不能の判断時期は、上記(1)のハのとおり相続の開始時であり、本件相続に係る相続税の申告期限までに本件各法人を清算したとしても、当該清算の事実は相続開始日後の事情にすぎず、相続開始日現在の本件貸付金の評価額を左右するものではないから、いずれにしても請求人の主張は採用できない。

出典:裁決事例「平21.3.16裁決 TAINSコードF0-3-245」審判所の判断部分より抜粋

おわりに

今回の裁決事例は、読んでる途中で結果が予測できるものでしたが、改めて注意だと思ったのは、財産評価基本通達205の適用にあたり、単に相続開始時点で債務者が債務超過という事実だけで当該通達を適用するのは危ないという点です。

今回も、債務超過となった原因(経常的に営業損失なのか、特別損失による一時的なものなのかなど)、債務超過の持続性、債務超過のボリューム、利益の状況などが総合的に勘案されています。

なお余談ですが、今回の事例の会社は清算時まで事業は順調だったとありますので、被相続人は生前会社を清算する気持ちはなかったと思われます。相続人が貸付金の相続税評価額を下げる目的のためだけに会社を清算したのだとしたら被相続人はどう思うかなとか考えてしまいました。

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