はじめに
私の会計学独学メモの記事としては、少し久しぶりの投稿になってしまいましたが、今回は、「リース資産及びリース債務の認識時点」という論点についてご紹介します。
公認会計士試験で出題済みの論点です
実はこの論点は、平成27年公認会計士試験の会計学で出題済みです。なので会計士受験生なら普通に知っていると思いますが、税理士受験生や不動産鑑定士受験生は知らない方も多いかと思います。
実際の会計士試験の問題はこちらです。
所有権移転外ファイナンス・リース取引は,当該リース契約が締結された日において,リース料総額の割引現在価値を考慮することなく,もっぱら当該リース物件の公正な評価額(時価)に基づいて,借手側の貸借対照表に認識すべきであるという考え方がある。この考え方の問題点を,現行のリース会計基準と対比させながら,説明しなさい。なお,イ)リース資産およびリース債務の認識時点と,ロ)リース資産およびリース債務の計上価額に関する論点に分けて解答しなさい。ただし,公正な評価額(時価)の測定時点について解答する必要はない。
出典:公認会計士・監査審査会ウェブサイト「平成27年公認会計士試験論文式試験の試験問題 会計学(午後)」(https://www.fsa.go.jp/cpaaob/kouninkaikeishi-shiken/ronbun_mondai27a/04.pdf)
リース資産およびリース債務の認識時点について、リース契約締結日とする考え方ではなく、基準がリース取引開始日とした理由を解答できるかが勝負になります。
会計基準の各論点に対する論拠については、だいたい各会計基準の結論の背景に記載されているのですが、リース会計基準の結論の背景をみてもこの論点に対する明確な論拠は記載されていないのでそこがこの論点の難易度が高いわけであり、さすが会計士試験という感じです(笑)。
論点の解答の出どころは?
では、どこを頼りに解答するかというと、概念フレームワークになります。
概念フレームワークでは、財務諸表の構成要素の認識に関して要件を示しています。以下、私の方で簡単にその要件をまとめると以下のようになります。
概念FW で述べられている「認識」の要件
① 財務諸表の構成要素の定義を満たすこと
② 財務報告の目的と財務諸表の役割に適合するものであること
③ 契約の部分的な履行の要件(例外:金融商品は価値の変動、すなわち契約の締結が要件)
④ 発生の可能性(蓋然性)の高さの要件
論
今回の論点では、③契約の部分的な履行の要件を基に解答を組み立てると良いでしょう。
つまり、簡単に書くと以下のような感じです。
リース契約締結日 → この時点では借手・貸手双方とも契約を履行していない → 契約の部分的な履行の要件を満たさない → 概念フレームワークで規定する認識の要件③を満たさない
リース取引開始日 → 借手がリース物件を使用収益する権利を行使することができることとなった日なので、貸手の使用収益させる義務は履行されている → 契約の部分的な履行の要件を満たす →概念フレームワークで規定する認識の要件③を満たす
おわりに
会計士試験で多いんですが、会計学の理論で難易度が高い問題の多くが、今回のように各会計基準の結論の背景だけでは解答を導き出せず、他の基準や概念フレームワークを根拠に解答させるタイプです。
私の場合、会計士試験は受験してませんが、会計士試験の会計学の過去問はほぼ解いているのである程度論点として覚えてしまっていますが、初見でこうした問題にぶち当たったときのアプローチの仕方として、他の基準や概念フレームワークに目を向けてみる方法を試してみると意外にシンプルに解答できるかもしれませんので、やってみてください。
また、普段の勉強の際にも、各会計基準だけで完結せず、他の基準や概念フレームワークとの関係を意識してみると良いでしょう。
ちなみに、今回ご紹介した論点は私が販売している会計学論点暗記レジュメにもCランクとして一応掲載してます(会計学ゼミ/Zoom対応可/レジュメのみ購入も可/)。