株価評価 相続税

類似業種比準価額の計算上、クレーン車売却益が「非経常的な利益」に該当するか?令和元年5月14日判決

株価評価に関する判決を読んだので自身の備忘録の意味も込めて該当とポイントをまとめました。

出典は、令和元年5月14日判決TAINSコード:Z888-2258です。

争点

この事例における主な争点は、記事タイトルにも書いたとおり、相続税申告における株価評価において、評価会社の類似業種比準価額の計算上、クレーン車売却益が「非経常的な利益」に該当するか?です。

類似業種比準価額計算における「非経常的な利益」の取扱いに関しては、私の過去の記事(類似業種比準価額計算上の留意点|非経常的な利益金額|)でもご紹介済みですが、簡単にいうと、類似業種比準価額の計算は、評価会社の➀支払配当、②利益、③純資産の3要素を考慮して求められますが、ある利益が「非経常的な利益」に該当すれば、②利益の計算上マイナスされ、その分類似業種比準価額は小さくなります。

財産評価基本通達183にも以下の通り記載されています。

「1株当たりの利益金額」は、直前期末以前1年間における法人税の課税所得金額(固定資産売却益、保険差益等の非経常的な利益の金額を除く。)に、・・・

そこで、納税者(原告)としては、クレーン車売却益は正に上記基本通達に記載のある固定資産売却益に当たり、「非経常的な利益」に該当すると主張しています。

被告(税務署)は、「固定資産売却益や保険差益が挙げられているのは、これらが通常は偶発的な取引であることから例示されているにすぎない。これに対し、固定資産売却益であっても、毎期継続的に売買が繰り返されるような固定資産売却益の場合には、その利益は当然会社の経常的収益力を構成するのであるから、非経常的な利益であるとはいえない。」として、本件のクレーン車売却益は「非経常的な利益」に該当しないと主張しています。

事実関係

この事例に関する事実関係で判決本文より重要と思われる部分以下にピックアップしておきます。

➀評価会社1は、取引先からの発注に基づき、同社所有の移動式クレーン車を貸し出し、同社所属のオペレーターが揚重作業を行う事業(以下「本件クレーン事業」という。)等を営む同族会社である。

➁評価会社1は、平成21年3月期から平成26年3月期までに発生した本件クレーン事業の用に供していたクレーン車の売却益(機械車両売却益)を、当該各事業年度の法人税の確定申告書に添付した損益計算書上、それぞれ「特別利益」として計上していた。

③評価会社1が、平成21年3月期から平成26年3月期までに、本件クレーン事業に使用していたクレーン車を売却することによって得た利益は、1億5265万0081円から16億2167万7238円であり、これは、同社の上記各期における営業利益の約23%~約341%をそれぞれ占めるものであった。

④評価会社1が金融機関や群馬県知事に提出した損益計算書においては、本件売却益は特別損益としての固定資産売却益ではなく収入高(営業利益)として計上されており、同社が税務申告において提出した損益計算書の記載内容(特別利益)と異なる。

裁判所の判断

裁判所は、クレーン車売却益は「非経常的な利益」に該当しないと判断しています(納税者の負け)。

以下、判決本文より裁判所の判断部分からポイント部分を抜粋します。

そして、ある利益が評価会社の「1株当たりの利益金額」の計算に際して除外される非経常的な利益に当たるか否かは、その利益が固定資産売却益又は保険差益に該当するか否かのみによって判断すべきものではなく、評価会社の事業の内容、当該利益の発生原因、その発生原因たる行為の反復継続性又は臨時偶発性等を考慮した上で、実質的に判断するのが相当であると解される。

前記ア及びイで検討したとおり、評価会社1が本件クレーン事業に使用していたクレーン車を売却することによって得た利益は、平成21年3月期から平成26年3月期までの各事業年度において、同社が行っていた事業の収益の相当程度を占めるものであったということができる。そして、本件クレーン事業は、同社が■■■■■■や■■■と並んで営んでいたものであるところ、この事業は、クレーン車を毎期継続的に売却することによって初めて利益を生じる仕組みとなっていたものである。
 このように、クレーン車の売却益が、評価会社1の重要な収益源であり、かつ、毎期継続的に行われ本件クレーン事業から収益を生じさせる源泉となっていたことに加え、前記ウのとおり、同社においても、金融機関等に提出する損益計算書においてクレーン車の売却益を特別損益としての固定資産売却益ではなく収入高(営業利益)として計上していたことを併せ考慮すると、本件売却益は、評価会社1の経常的収益力を構成するものと認められ、評価通達183(2)において1株当たりの利益金額の計算に際し法人税の課税所得金額から除くこととされている「非経常的な利益」に該当しないというべきである。

私見

納税者が基本通達で固定資産売却益が「非経常的な利益」の例示として記載されているから、これを形式的に適用して、クレーン車売却益を「非経常的な利益」とした点は理解はできますが、事実関係➁よりクレーン車売却益に反復継続性がみとめられ、事実関係③より金額的な重要性も高いと認められます。

そして、個人的に一番注意をひかれたのが、事実関係④より、融資や建設業の許認可を有利に進めるため、金融機関や群馬県知事に提出した損益計算書上ではクレーン車売却益を収入高(営業利益)として計上していた点が裏目にでてしまった点です。

もし、金融機関や群馬県知事にも税務署に提出した損益計算書(クレーン車売却益を特別利益に計上)を提出していれば結果が変わったかというとそれは事実関係➁③などがある以上一概には言えませんが、税務署提出目的、金融機関提出目的、建設業の許認可獲得目的等、各種様々な目的のために異なる決算書を作成することが、株価評価の場面で納税者にマイナスの影響を与える点は気にかけておきたいなと思いました。

もっとも、税理士が作成する決算書は主に税務署提出目的のものであり、クライアント側が税理士に依頼せず独自に金融機関提出目的、建設業の許認可獲得目的で決算書を作成していた場合には、株価評価する税理士も他の目的のために作成された決算書の存在に気が付かないこともあるでしょうから、なかなか難しい問題ではありますが。。。

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