中小企業と会計方針

上場企業の経理部員の方であれば、会計方針と聞けば、有価証券報告書に記載しているあれねとピンとくると思いますが、非上場の中小企業だとあまりピンとくる方は多くないかと思います。

会計方針とは、財務諸表の作成にあたって採用した会計処理の原則及び手続をいう(過年度遡及会計基準の定義より)と定義されてます。

当たり前ですが、自社が採用した会計方針にしたがって会計処理をしなければならないわけです(正当な理由による変更の場合除く)。

中小企業と会計方針

中小企業において、自社が採用した会計方針をしっかり把握している経理部員が少ないであろう理由としては、中小企業の場合、決算書の作成を税理士に丸投げ又はほぼ丸投げが多いため、決算書に添付する個別注記表に記載されている重要な会計方針を見る機会がなく、当然個別注記表を自分たちで作ることがないからでしょう。

一方で上場企業は有価証券報告書を基本的には自社で作成しますのでそこに当然に重要な会計方針の記述も求められており、必ず目にしています。

会計方針に従った会計処理がなされていないケース

上記のとおり、中小企業では税理士が会計方針を含む個別注記表を作成しているケースが多いため、自社の実際の会計方針と決算書に添付されている個別注記表に記載されている会計方針がずれているケース(会計方針に従った会計処理がなされていないケース)があります。

例えば、

①棚卸資産の評価方法について、個別注記表上は「最終仕入原価法による原価法」と記載しておきながら、実際会社で行われている棚卸の方法は先入先出法による原価法でやられている。

②貸倒引当金の計上基準について、個別注記表上は「法人税法上の法定繰入率により計上」と記載しておきながら、貸倒引当金を計上していない。

というケースです。

特に②の貸倒引当金のケースですが、例えば、貸倒引当金を計上前の段階で既に当期純損失(赤字)、かつ、法人税の課税所得もマイナス(欠損)の場合、貸倒引当金を計上すると赤字が膨らみ、さらに法人税の節税効果はないので貸倒引当金を計上するのをやめようなんてことが考えられますが、これは「法人税法上の法定繰入率により計上」という会計方針に反してますね。

おわりに

私自身は税理士ですが、やはり税務の都合で会計方針に反してはならないと思います。中小企業といえども、節税のことだけ考えればよいわけではなく、オーナー株主以外の株主もいるし、金融機関や大手取引先など決算書を見る利害関係者もいるわけです。

自分でこうやりますって書いてる会計方針にはやはり沿わないとダメでしょう。

 

商流と物流(森)の俯瞰力

税務調査では必ずその会社の「商流」と「物流」がどうなっているかの説明が求められます。

「商流」と「物流」って聞くとなんだか少し難しく聞こえるかもしれませんが、「商流」は発注、納品、製造、販売といった取引の流れの中での各種書類、データの流れ、「物流」とは各商流の段階における物理的なモノの流れ考えれば少しはイメージがわくかと思います。

なぜ「商流」と「物流」が調査で問われるかといえば、限られた調査期間の最初に会社の全体像を俯瞰することで、税務上問題となりそうな部分をあぶりだすためでしょう。

会社の経理部はどうしても「商流」や「物流」といった会社全体の森を見ず、交際費がどうとか消費税コードがどうとかいった木に目が行きがちで、森から見ないとわからない潜在的な問題点が取り除けていないケースが多いです。

経理部に求められる俯瞰力

税務調査対策のためだけにという意味ではなく、やはり会社の経理部は会社全体の「商流」と「物流」をしっかり把握しておく必要があると思います。

ここが単に資格(例えば日商簿記1級)持ってても、経理ができるとはいえない理由の1つでしょう。

新人経理マン教育の1つとして、まずは会社の各部門をOJTで回らせて会社の全体像を把握させるというものがありますが、これは経理部に求められる俯瞰力を植え付けるためだと思います。

経理という仕事には、1つ1つの仕訳を丁寧に切るといった繊細さに加え、会社全体を俯瞰する俯瞰力が求められます。この俯瞰力の方は資格試験の勉強では補えない部分でどうしても実務経験がものをいいます。

商流と物流はバラバラに見ないこと

会社全体を俯瞰する、すなわち、商流と物流を把握するさいにこれらを別々に見ないことが重要です。

経理部ではどうしても商流(取引の過程で生じる書類やデータ)に目が行きがちで現場でのモノの流れに目が行きにくいです。

取引の各段階、製造工程の各段階でモノがどのように流れ、どこにあるのかが把握できていないと例えば、棚卸資産の計上漏れといった税務リスクを軽減することはできません。

おわりに

元経理マンの私も上記のような俯瞰力が十分に足りていなかったなと過去の自分に対する反省がありますが、そういった自身の反省も踏まえて、今税理士としてお客様の会社と接する際には、会社全体の商流と物流を把握するように心がけています。

商流と物流を図に落とし込んで眺めてみることでここおかしいな?という気付きが生まれます。