中小企業グループの経理体制構築

中小企業に限りませんが、親会社と子会社といったように、複数の企業グループで経営・ビジネスを行っている企業はたくさんあります。

そんな企業グループにおける経理体制は大きく以下3パターンに分かれると思います。

パターン1 親会社が各子会社の経理業務を全て代行している
パターン2 各子会社にはそれぞれ経理部門があり、経理業務は子会社で完結できる
パターン3 親会社が各子会社の経理業務の一部を代行している

中小企業グループ経理体制構築の留意点

中小企業グループで上記パターン2の経理体制の場合は留意しないといけないことがあります。

中小企業の場合、なかなか経理の人材採用まで十分に行われていないケースが多く、各子会社で経理部門があるといっても経理担当者1名なんてことは普通にある状況でしょう。

各子会社に経理担当者1名といった場合、親会社主体で定期的に各子会社の経理担当者を集めて勉強会や会議を実施する等しないと、各子会社の会計方針がバラバラになる可能性が高いです。

各子会社の会計方針がバラバラだと、同業種の各子会社間であっても業績比較が十分に行えません。結果的にグループ経営が十分になされない可能性があります。

もちろん、各子会社もそれぞれ別会社なので、細部まで全部同じ会計方針である必要はありませんが、同業種の子会社なら大枠(個別注記表に記載の会計方針レベル)は揃え、使用する勘定科目などを統一しておいた方がよいでしょう。そのためにも、グループ全社の経理担当者が集まっての打ち合わせが必要になってきます。

おわりに

パターン2が問題あるならパターン1に変えればいいんじゃない?って思う方もいるかもしれませんが、親会社で子会社の経理業務まで全て行う体制を構築するには急にはできません。

親会社での経理担当者の人材確保、子会社の経理担当者の本社への転籍、システムの見直し、帳簿書類の移管等やらなければならないことがたくさんありますので、段階的に親会社へ経理業務を移管することになるでしょう。

また、パターン1とパターン2の折衷タイプとしてパターン3もあり得ますが、パターン3の場合はどこまで親会社が代行するのかしっかりと線引しておく必要があり、子会社も一部経理業務を行うことから親会社との連携が重要になってきます。

いずれにしても単なる事務処理屋としての経理ではなく、しっかりとグループ内でコミュニケーションをとっていかないと強い経理にはなりません。

ご自身の会社の経理部に勘定科目処理マニュアルありますか?

今回は主に経理マン向けの記事になりますが、ご自身の会社の経理部に勘定科目処理マニュアルはありますか?

いきなり質問からはじめてしまいましたが、勘定科目処理マニュアルという正式名称があるわけではなく、要は、各勘定科目別にどのような取引の際に使用するのかがまとめられたマニュアルを指します。

勘定科目処理マニュアルのメリット

勘定科目処理マニュアルがあることによるメリットとして私が特に強調したいのは以下の通りです(他にもメリットはありますが)。

メリット 期待できる効果
各科目ごとの月別比較・年度別比較可能性の担保 各経理マンごとに勘定科目の選択基準がバラバラで、いくら各科目ごとに月別比較・年度別比較してもその増減が全く説明できないという事態を防げる(例えば、同じ取引について、ある経理マンは雑費で処理、別の経理マンは消耗品で処理という事態を防げる)。
ベテラン経理マンの急な退職により経理業務がストップするリスクの軽減 勘定科目処理マニュアルに限ったことではありませんが、各経理業務別のマニュアルが作成されていれば、ベテラン経理マンの急な退職による経理業務の停止リスクにも備えることができる。
新人経理マンの業務レベルの担保 新人経理マンに十分なOJT期間が取れない場合でも、しっかりとしたマニュアルがあれば最低限の業務レベルは担保できる。
頻度は少ないが取引金額が大きなイレギュラー取引の仕訳処理 毎月発生するようなルーチン取引は、会計システムにエントリーする仕訳フォームを定型化したり、会計システム側の設定をいじることで対応可能な部分が多いですが、頻度は少ないが取引金額が大きなイレギュラーな取引は仕訳ミスが多く、また仕訳をも違えると損益に与えるインパクトも大きいのでこれをマニュアルに落とし込むことで未然に防げる。

マニュアル作成と更新は経理業務の1つ

勘定科目処理マニュアル以外のマニュアルもそうですが、すぐに作れるものではありませんし、一度作って終わりというものではなく常に更新をしていかなければなりません。作成・更新の手間がかかるのでこういったマニュアルが作成されていない会社様が多いのではないかと思います。

うちは顧問税理士に会計データをチェックしてもらっているから大丈夫という会社様も多いと思いますが、先生は24時間365日ずっとチェックしていてくれてるわけではないですよね。

税理士の私が言うのもなんですが、会社の会計データを常にチェックできる体制にあるのは税理士ではなく、経理部の皆さんだと思います。社内で起きている様々な取引についてスピーディーに情報収集できるのも税理士ではなく経理部の皆さんなので、勘定科目処理マニュアルを作って更新していけるのもほかならぬ経理部の皆さんなのです。

自分が退職する時になってはじめて後任にマニュアルを作ってあげるのではなく、是非経理部として一丸となってマニュアル作成に取り組んでもいいのではないかと思います。

勘定科目処理マニュアル作成時のアドバイス

私はお客様が勘定科目処理マニュアルを作成する際にいろいろなアドバイスをさせていただくことを得意としています。お客様ごとに固有のアドバイスはありますが、一般的に言えることとして、このようなマニュアルをはじめて作成する際には、是非現状の勘定科目の使い方の見直しを併せて行うことをお勧めしています。

例えば、ずっと昔から「消耗品費」と「事務費」という科目を使っているけど、よくよく考えれば今特にこの2つの科目に区別する必要性がないので今後は「消耗品費」に統一した方がいいというケースもあります。

あと、せっかく勘定科目処理マニュアルを作るのであれば、科目別に消費税コードの処理方法も併せて記載することをお勧めします(特に損益科目について)。日商簿記2級や1級保持者で仕訳は切れても消費税コードを間違えることは多々ありますので。「会計の知識がある=経理ができる」という等式は成り立ちません。

AIと経理業務について~雑感~

今後AIが経理業務の一翼を担ってくるわけですが、経理業務の一部を人からAIへバトンタッチすることを想定してもこのようなマニュアルを作成することのメリットはあると考えています。

例えば、AIに過年度の大量の仕訳データや総勘定元帳を読み込ませて学習させる場合を想定しても、肝心の仕訳データや総勘定元帳に統一感がなく、ちぐはぐな処理がされているようですとAIもフル活用できないのではないかと思います。それでも正しい仕訳を切ってくれるのがAIの凄さなのかもしれませんが、どうせ学習させるなら、よい教材で学習させてあげたいなと思います。