はじめに
相続税の財産評価基本通達上、非常に大きな改正として、平成30年1月1日以降「地積規模の大きな宅地」の新通達20-2の創設がありました。
この新通達の創設に伴い、これまで実務上いろいろ問題のあった、いわゆる広大地通達が廃止されました。問題があったというのは、適用できると非常に大きな減額効果のある広大地通達の適用可否判断が難しく、納税者と課税庁でもめることが多かったということです。
この点、新通達である「地積規模の大きな宅地」は適用要件が広大地通達に比べて定量的になり、適用可否判断の難易度は下げられています。
広大地通達よりも使いやすくなったとは言っても要注意なポイントはいくつかあります。
倍率地域にある土地も検討要
この新通達の適用方法等に関して、国税庁タックスアンサー及び質疑応答事例集で各種事例が取り上げられています(国税庁タックスアンサー:No.4609 地積規模の大きな宅地の評価)。
個人的に、実務上注意が必要だなと思うのは、倍率地域にある土地でもこの新通達の適用可否を検討しないといけないというところです(国税庁質疑応答事例:地積規模の大きな宅地の評価-倍率地域に所在する場合の評価方法)。
上記、国税庁質疑応答事例より以下抜粋します。
倍率地域に所在する「地積規模の大きな宅地」については、次のうちいずれか低い方の価額により評価します。
①倍率方式により評価した価額
②その宅地が標準的な間口距離及び奥行距離を有する宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額を路線価とし、かつ、その宅地が普通住宅地区に所在するものとして「地積規模の大きな宅地の評価」に準じて計算した価額
(注)「その宅地が標準的な間口距離及び奥行距離を有する宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額」は、付近にある標準的な画地規模を有する宅地の価額との均衡を考慮して算定する必要があります。具体的には、評価対象となる宅地の近傍の固定資産税評価に係る標準宅地の1㎡当たりの価額を基に計算することが考えられますが、当該標準宅地が固定資産税評価に係る各種補正の適用を受ける場合には、その適用がないものとしたときの1㎡当たりの価額に基づき計算します。
要は、②の新通達を適用した価額も算出して、①と比較して小さい方で評価します。
②の計算は、注書きにもあるように、固定資産税評価額は使用せず、近傍宅地の1㎡あたり固定資産税評価額 × 宅地の倍率を用いる方法(市街化調整区域の雑種地と類似の方法)ですね。
倍率地域 → 計算楽 → 固定資産税評価額 × 倍率
で終わりとしてしまうと、新通達の適用があり、新通達②の金額の方が低い場合、過大評価になってしまいますので注意ですね。