上場企業はじめ比較的規模の大きい企業では、稟議をあげる仕組みが構築されています。
一方で中小企業では、稟議をあげる仕組みがないことの方が多いです。
そもそも稟議をあげる仕組みとは
そもそも稟議をあげる仕組みとは、会社が何らかの取引を行う前にその取引の実行可否を検討する仕組みとイメージしてもらうといいと思います。
具体的には起案者が取引内容、目的、必要な金額等を記載した稟議書を作成し、社内で定めた以下のようなルートで稟議書を回覧し、当該取引の実行可否を検討していきます。
起案者 → 所属部門の部課長 → 所属部門を管理する取締役 → 経理・財務部 → 社長
会社によっては、取引金額が一定額以下の場合は、所属部門を管理する取締役までの回覧ルートでOKというように全て社長まで回す手間を省いているところも多いです。
また、回覧の方法も、紙の稟議書を回す原始的な方法以外に電子メールで回覧する、クラウドで共有する等様々な方法が考えられます。
中小企業でも稟議をあげる仕組みを
稟議をあげる仕組みを作ることのメリットはたくさんありますが、私が思うに、①不正防止効果、②適正な会計処理・税務判断に役立つということがあると思います。
①不正防止効果
これは何らかの取引を行う前に事前に複数の人の目にさらされることで大きな不正を防止(抑止)する効果が期待できると思います。大企業に限らず、中小企業でも従業員不正や取締役不正は起きており、不正は会社が真剣に取り組まないと減少していきません。
②適正な会計処理・税務判断に役立つ
これは稟議書に取引目的や理由が記載されており、参考資料等が添付されていることで経理部が適正な会計処理・税務判断をしやすくなるということです。例えば、改修工事が資本的支出に該当するのか、修繕費に該当するのかは単に工事の請求書を見ただけでは判断が困難です。見積書や工事の目的、参考資料があることで適正な処理に近づけますので、それらを集約した稟議書が役立つわけです。
なお、税務調査では調査官から「議事録はありますか?、稟議書はありますか?」と聞かれることが多いです。
税務調査で議事録や稟議書を確認する目的としては、議事録や稟議書に取引目的や理由などが細かく記載されているため税務リスクを抽出しやすいからです。
単に元帳の摘要欄だけ見ていくよりも効率的に税務リスクを抽出できます。
では、議事録や稟議書=税務リスクが抽出という理由でこれらの内部書類を作らない方がいいというのは全然違います。
税務リスクの観点では、これらの内部書類は税務リスクを含む可能性がある一方で、税務リスクを減らす効果もあります。
しっかりと作成されていれば、税務調査での提出書類としても証拠力があり、不要な争いを避けることもできます。
おわりに
はじめて稟議をあげる仕組みを作るのは手間がかかりますが、仕組みとして定着すれば上記のようなメリットも期待できますので、特に稟議をあげる仕組みがない中小企業には是非検討してほしいなと思います。
なお、稟議書フォーマットを工夫することで、会計処理・税務判断する経理部の負担も減らし、かつ、適正な処理を実現することができます。そうした稟議書フォーマットの作成支援なども私の好きな業務の1つです。