グループ経営における経営指導料のあり方①平10.2.20裁決を踏まえて
上記記事に引き続き、経営指導料の事例『平10.2.20裁決 TAINSコードF0-2-002』についてみていこうと思います。
まだ、上記記事をお読みでない方は、この記事を読む前に上記記事をお読みください。
裁決事例の概要
まず、今回の事例を概要を簡単にまとめると、
人材派遣業を営む同族会社である納税者が親会社に対して支払った経営指導料のうち、税務署が算定した経営指導料としての適正額を超える部分が寄付金認定された事例です。
寄付金認定額の金額感は以下の通りです(単位:千円)。
区分 | 平成3年3月期 | 平成4年3月期 | 平成5年3月期 |
経営指導料① | 181,604 | 114,606 | 107,340 |
経営指導料の適正額② | 82,208 | 80,987 | 74,093 |
寄付金認定額①-② | 99,396 | 33,619 | 33,246 |
役務提供の実態の有無
役務提供(経営指導)の実態の有無については、どうしても事実認定の要素が強く、裁決本文を読んだだけでは全容は把握できかねますが、それでも裁決本文を読むことで、注意しないといけないポイントは拾えます。
この点、今回の事例における税務署は、納税者が親会社から提供されている役務提供は、契約書に記載の業務内容の①従業員募集業務、②事務管理業務の2項目のみと主張しています。
一方で、納税者は、上記2項目以外の業務提供も受けていると主張しています。
そして、審判所は、事実認定の上、納税者の主張を支持していますが、審判所の判断で参考となる部分を少し長いですが以下に引用します(B社が親会社、請求人が寄付金課税された納税者です)。
請求人がB社から提供される役務の内容については、本件各契約書において上記イの(ホ)及び(リ)のとおり記述されているにとどまり、当該役務の詳細の内容まで記載されていない。
確かに、請求人は上記イの(ハ)に記載した事業を営んでいることからすると、B社から受けた主要な業務は従業員募集業務及び事務管理業務であるとみることはできるが、請求人は、B社から現実に上記ロ及びハの(イ)に記載した役務の提供を受けており、上記ハの(ハ)及び(ニ)のとおり、これら個々の役務は本件各契約書に定められた業務に該当すると認められることから、請求人が本件各契約書に基づいてB社から提供された役務は、上記の2業務以外にも有形無形のサービスを含めた包括的な役務も提供されていたとみるのが相当である。
出典:『平10.2.20裁決 TAINSコードF0-2-002』
審判所は、税務署の主張にも理解を示す(上記青字部分)ものの、納税者の提出した資料等を勘案して税務署が主張する業務以外の役務提供もあると認定しています(上記赤字部分)。
おわりに
今回の事例では、納税者が提出した各種資料より親会社から役務提供を受けている事実が審判所に伝わったのでよかったのですが、契約書を見る限りは、①従業員募集業務、②事務管理業務の2項目の役務提供のみと読みとられる可能性がある点は審判所の判断からも読み取れます。
当たり前のことですが、改めていえば、契約書における業務内容の書き方に気を配る必要があるということです。
これを踏まえて、個人的に思ったのが、経営指導(管理)契約書の業務内容の書き方について、例えば、「経営管理業務一式」といったような包括的な書き方ではなく、各種業務内容を細分化して丁寧に書き出した方が良いのではないかということです。
契約書本体では「経営管理業務一式」と書くにしても、別紙で個々の提供業務内容を具体的に列挙する方法でも良いかと思います。
もちろん契約書にいくら業務内容が細かく丁寧に書かれていても、その業務が実施された証拠を示せないとダメなので、契約書+業務実施を裏付けるエビデンスが必要なのは言うまでもありません。
ただ、業務内容が包括的に漠然と定められているよりは、個別具体的に細分化されている方が、細分化された各業務ごとのエビデンスは整え易いし、税務調査での説明性も向上すると思います。
今回の事例の話に戻りますが、結局、役務提供の実態については納税者の主張が認められていますので、あとは、その対価としての経営指導料の算定方法の議論が次になされています。これについては次回の記事で書いていこうと思います。