グループ通算制度(仮称)
令和2年税制改正の項目として注目されていた「連結納税制度の見直し」ですが、「グループ通算制度(仮称)」という名称で現在検討されているようですね。
税務通信を契約されている方であれば、3570号(2019年9月2日)にコンパクトにまとめられているのでそちらを読めば、新制度がどのような方向性に向かっているのか把握できると思います。
もし、税務通信を契約されていなければ、以下政府税制調査会に資料がアップされています。私も全部読めていませんが、パワポの資料が読みやすいと思います。
第24回 税制調査会(2019年8月27日)資料一覧:https://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/2019/1zen24kai.html
ここでは、上記税制調査会のパワポ資料のうち、一部(新制度の基本的な仕組み)の部分だけ以下に抜粋します(青字部分は筆者が強調)。
三 新たな制度の基本的な仕組み
○ 見直し後の新たな制度(グループ通算制度(仮称))は、企業グループ内の各法人を納税単位とする個別申告方式とすることが適当。(現行制度と同様、親法人とその親法人による完全支配関係にある全ての子法人を対象とし、また、制度を適用するかどうかは各企業グループが選択)。
○ 企業グループ内の法人間で、プロラタ方式(赤字法人の欠損金を、黒字法人の所得金額の比で配賦する等)により損益通算を行うことが適当。修正・更正の場合には、原則として他の法人の税額計算に反映させない(遮断する)仕組みが考えられる。
○ 制度の新規適用時等における時価評価や欠損金の扱いについて、組織再編税制との整合性等を踏まえつつ検討が必要。
○ グループ調整計算(※)について、事務負担軽減、経営実態や制度趣旨、制度の濫用可能性、制度を選択していない企業グループとの公平性等の観点を踏まえ個別に検討することが必要。
※受取配当等、寄附金、外国税額控除、研究開発税制、中小法人特例の判定 等
○ 円滑な移行のため、法改正から新たな制度の施行まで1~2年程度の準備期間を設けることが考えられる。出典:令和元年8月27日 政府税制調査会 説明資料(連結納税制度の見直しについて)
税理士試験(法人税法)へのインパクト
この「グループ通算制度(仮称)」は、実務的にも例年には無いくらいのかなりのインパクトがあると感じています。
いわゆる中小企業でも、親会社と子会社の形態でグループ経営しているところは多いですが、従前の連結納税制度を導入することによる最大のハードルである事務負担の増加があり、連結納税の適用を断念しているところが多かったのではないかと思います。特に子会社の数が多かったり、M&Aで子会社化した子会社と経理面で連携が取れていない場合は特に事務負担が大きくなります。
今回の「グループ通算制度(仮称)」では、事務負担の軽減も踏まえて検討されているので、勝手な推測ですが、従前の連結納税制度よりは適用するグループ会社が増えるのではないかと思います。
私自身は実務家の1人としてこの「グループ通算制度(仮称)」について関心を寄せていますが、税理士試験(法人税法)受験生にも少なからず影響があるのではないかと思っています。
このままスムーズにいき、令和2年税制改正項目として「グループ通算制度(仮称)」が盛り込まれても、新制度適用までには、法改正から1~2年程度の準備期間を設けるとのことですので、法人税法の試験で本格的に出題されるとしたら、実務上適用が開始されるのと同じタイミングが考えられます。
ただし、税制調査会の資料(以下、青字部分は筆者が強調)によれば、従前の連結納税制度もまだ残ることが考えられますので、来年の税理士試験(法人税法)の試験上、連結納税制度の重要性は過年度よりもかなり高くなるのではないかと思います。
7.適用関係
(1)現行制度を適用している連結グループは、グループ通算制度(仮称)の施行後は、自動的に新制度に移行することとするが、現行制度を適用している連結法人にとって、新制度への移行は、連結納税制度を承
認申請した時点では予期し得なかったことであるため、新制度に移行することを望まない連結グループは、新制度の施行までに連結親法人が届け出ることにより、新制度に移行しないことができることとすることが考えられる。出典:令和元年8月27日 政府税制調査会 連結納税制度の見直しについて
おわりに
もし私が試験委員なら、従前の連結納税制度についての基本的な論点や、新制度である「グループ通算制度(仮称)」と異同点などを聞きたいですが、新制度の方は上記の通り適用開始まではあまり深堀して問われないかもしれないですね。
余談ですが、私が法人税法を受験した年は「グループ法人税制」適用初年度でしたので、理論、計算ともにもろに「グループ法人税制」が出まくりました。今回の「グループ通算制度(仮称)」も「グループ法人税制」に匹敵するくらいのインパクトを個人的には感じていますので、今後の法人税法の試験上、その動向を自分自身で追っかけていった方が良いと思います。