建設業の原価計算において工事台帳はなくてはならないものですが、工事台帳で管理される原価要素の中でも特に労務費の管理(すなわち、作業日報の管理)が適正な原価計算を行う上では大事になってきます。
原価計算と工事台帳の関係
まず、建設業における原価計算と工事台帳の関係を簡単に示すと以下の通りです(細かい点は省きイメージ化したものです)。
工事台帳で各工事にかかったコスト(原価)が集計され、この集計コストに基づき会計上の完成工事原価や未成工事支出金が決定されますので工事台帳は原価計算において要となる資料(データ)といえます。
工事台帳の作成方法としては、紙で作成、Excelで作成、工事台帳システム(ソフト)で作成等、会社によって様々です。工事台帳システムも自社制作の場合もあれば、パッケージソフトの場合もあります。
作業日報の重要性
工事台帳の作成は、経理などのバックオフィスだけでは不可能であり、現場従業員の協力が必要不可欠です。
工事台帳で管理される原価要素の中でも特に労務費のデータは現場従業員の作業日報がベースになります。各工事ごとにどの従業員が何時間工事に従事したのかが管理されていないと適正な労務費の集計が困難となります。
現場従業員の作業日報の作成方法についても、紙メース、Excelベース、システム(ソフト)ベース等様々ありますが、いずれの方法による場合でもこの作業日報の作成を現場従業員に全て丸投げして経理などのバックオフィスが何も関わらないのはよくありません。
作業日報の作成を現場従業員に全て丸投げの場合、以下のような問題が起き得ます。
作業日報の入力遅滞
例えば、現場従業員もいろいろな方がおり、作業日報の入力を怠る方もいます。数か月分まとめて作業日報の入力するとなると入力内容の正確性はもはや担保されません。
作業時間の虚偽入力(過小入力、過大入力)、工事間で作業時間の付替え
例えば、A工事は赤字工事なのでこれ以上赤字を出せないという状況下ではA工事にかかった作業時間を他の利益率のよいB工事の作業時間に付け替えるといったことが行われやすいです。こういったことが行われると会計上税務上問題があるのはもちろんのこと、経営上も赤字工事の見過ごし等業務改善が遅れるという問題があります。
上記のような問題が起きないようにするためにも、バックオフィスも積極的に現場作成の作業日報のチェックを実施したり、現場への適正入力の指導を行っていく必要があります。
工事台帳、作業日報は全て現場任せというのはやめてバックオフィスを含め、会社全体で管理する姿勢が大事になります。