一般的に個人が所有する土地や建物を売却すると所得税が課税されます。
所得税額は以下の算式により計算されます。
収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額 = 課税譲渡所得金額
課税譲渡所得金額 × 税率 = 所得税額
もう少し詳しく知りたい方は、国税庁HPタックスアンサーNo.1440をご確認ください。
概算取得費控除(5%)とは
例えば、土地を先祖代々相続により承継してきた土地などが代表例ですが、売却する不動産をいくらで取得したのかが不明なケースが多々あります。
また、自分が取得した土地でも、売買契約書を紛失したため、いくら払ったのかわからないということもあります。
そうした場合、その土地を売るにあたり、取得費としては1円も引けないのか?ということが問題になります。
ここで、取得費が不明な場合の特例として、概算取得費控除(5%)というものがあります。
これは、譲渡による収入金額(売った金額)の5%を取得費として計算できるというものです。
まあ、売った金額のたった5%かと思われる方が多いかもしれませんが、1円も引けないよりはましと思いましょう。
また、たまにこの制度について勘違いされている方がいるのですが、実は取得費が分かっている場合でも、譲渡による収入金額(売った金額)の5%を取得費として計算できます。
概算取得費控除(5%)のミス事例
上記のように、取得費が不明な場合等には概算取得費控除(5%)は取得費を計算するのに便利な方法なのですが、その適用に当たり、ミスしやすいところも多いです。
ミス事例としてよくあるものを2点ほど以下にご紹介します。
ミス事例1
平成20年に先代より相続により取得した土地を平成30年中に売却
相続登記に要した費用:50万円
先代の当該土地の取得費:不明
今回売った金額:5,000万円
この場合、取得費不明なので、概算取得費控除(5%)を使い、250万円(=5,000万円×5%)を取得費とすることはOKですが、相続登記費用50万円を譲渡費用として併せて300万円を売った金額から控除できるでしょうか?
答はできません。
理由は、相続登記費用は今回の土地の譲渡費用ではなく、売主が当初相続により当該土地を取得する際に支出した付随費用であり、取得費を構成するものだからです。今回は取得費として概算取得費控除(5%)を使うこととしていますので、さらに取得費として相続登記費用を加算してしまうと取得費の重複控除を認めることになりますので、このような重複控除は認められていません。
ミス事例2
所有する土地を売却するにあたり、土地の一部造成をした。
造成費用:100万円
取得費:不明
今回売った金額:5,000万円
この場合も、取得費不明なので、概算取得費控除(5%)を使い、250万円(=5,000万円×5%)を取得費とすることはOKですが、造成費用100万円を譲渡費用として併せて350万円を売った金額から控除できるでしょうか?
答はできません。
理由は、土地の造成費用は譲渡費用ではなく、土地の価値を高める費用であるため、土地の取得費を構成するものだからです。今回は取得費として概算取得費控除(5%)を使うこととしていますので、さらに取得費として造成費用を加算してしまうと取得費の重複控除を認めることになりますので、このような重複控除は認められていません。
おわりに
ちょうどこの記事を書いてる時期(2月)あたりは所得税の確定申告シーズンですので、所得税関連ネタで記事を書いてみました。
今回ご紹介した概算取得費控除(5%)がらみのミス事例は他にもありますので、機会があればまた記事をアップしようと思います。
譲渡所得は所得税のなかでも非常に難解であり、自分の備忘録としても記事を書く効果がありますので。