世間一般では、印紙を貼らないといけないのは契約書であり、見積書には印紙を貼る必要はないと思っている方も結構多いかと思います。
確かに、見積書に印紙を貼らないといけないケースは多くないですが、それでも貼らないといけないケースもありますので注意が必要です。
印紙税法上の契約書の範囲は広い
以前の記事(印紙税法上の契約書の範囲はかなり広い)でも紹介しましたが、印紙税法上は世間一般でこれは契約書じゃないだろうと思うようなものでも契約書に当たることがあります。
そのことは、課税物件表の適用に関する通則5から読み取れます。
通則5 この表の第一号、第二号、第七号及び第十二号から第十五号までにおいて「契約書」とは、契約証書、協定書、約定書その他名称のいかんを問わず、契約(その予約を含む。以下同じ。)の成立若しくは更改又は契約の内容の変更若しくは補充の事実(以下「契約の成立等」という。)を証すべき文書をいい、念書、請書その他契約の当事者の一方のみが作成する文書又は契約の当事者の全部若しくは一部の署名を欠く文書で、当事者間の了解又は商慣習に基づき契約の成立等を証することとされているものを含むものとする。
上記通則5の赤字部分が印紙税法上の契約書の範囲が広いことを示唆してます。
単に、「○○契約書」という文書のタイトル(名称)だけで判断してはいけないというところが注意です。見積書というタイトル→契約書じゃないという発想は印紙税的には見ると危ないです。
見積書でも印紙がいるケース
では、見積書でも印紙がいるケース、すなわち、見積書が印紙税法上の契約書となるケースはどのような場合をいうかというと、例えば以下のような場合が典型例かと思います(以下に記載の参考文献を基に作成しております)。
①発注者から請負会社に見積り依頼
②請負会社が見積書を作成して発注者に送付
見積書には依頼業務内容と見積金額の記載あり。
また、見積書の末尾には、「御用命の際は御署名押印の上ご返信願います。」と書かれている。
③発注者が見積書を確認し、正式に注文することを決め、見積書の末尾に署名押印して請負会社に返送
上記①②③の流れで最終的に請負会社の手元には発注者の署名押印が入った見積書が残るわけですが、これが印紙税法上の契約書に該当し、内容が請負であれば2号文書に該当するリスクが出てくるというわけです。
すなわち、この例の見積書は単なる見積書ではなく、申込とそれに対する応諾の事実を証明するものであるため、印紙税法上の契約書に該当します。
上記見積書の具体例が見てみたいという方は、以下の書籍に見積書が載っていますのでご確認されることをお勧めします。
参考文献:松山秀樹著「書式550 例解印紙税」(税務研究会出版局、平成25年6月30日第十訂版第一刷発行、313項)
おわりに
印紙税で怖いのは、世間一般の常識では契約書と思いもしないようなものが契約書に該当したりするところでしょう。常識とズレているだけに「なぜ?納得いかない!」となりがちです。そういったズレをすこしでもなくしていくのが専門家の務めでもあると思いますし、企業経理部や企業法務部の務めでもあると思います。