税務調査からみる内部書類の作成と保管の必要性

経理関係の書籍で出てくる言葉で「内部書類(内部資料)」と「外部書類(外部資料)」というものがありますので、すでこの言葉についてはご存知の方も多いかと思います。

内部書類と外部書類の範囲

内部書類の範囲のとらえ方については色々な見方があるかと思いますが、私はその会社内で作成される書類で例えば、株主総会議事録、取締役会議事録、その他各種会議体の議事録、社内稟議書、就業規則等の各種社内規定、賃金台帳などと広くとらえています。

一方で外部書類は、その会社と外部の第三者とでともに作成する資料や外部の第三者が作成する資料で例えば、契約書、支払の請求書・領収書、残高証明書などととらえています。

内部書類の作成と保存の必要性

税務調査があると必ず帳簿書類の作成元となった資料は確認されますので、内部書類と外部書類の提示が必要になってきます。

外部書類については外部の第三者がその作成に絡んでいますので、その内容の説得力も社内だけで作る内部書類よりも高いと言われています。

じゃあ、内部書類は作らなくてもよいかといわれればそれは違います。いくら内部書類の方が外部書類よりも説得力が劣るからといって作成しないのはよくないです。

税務調査で問われるのは過去の取引ですので、当時の取引状況についてなぜその取引を行ったのか等の経緯や目的を説明するのに口頭よりは稟議書などの内部書類があった方が説得力が高いものとなります。

つまり、税務調査において、内部書類が作成されていないという状況では口頭で過去の取引について説明することとなり、説得力ががくんと落ちてしまいます。あくまでも私個人の感覚ではありますが、税務調査における一般的な説得力の強弱は以下の通り、口頭説明が最も劣ると思います。

税務調査における一般的な説得力の強弱

外部書類 > 内部書類 >> 口頭説明

ですので、外部書類は当然に保管し、内部書類をしっかり作成して残しましょうというのが私の考えです。

おわりに

中小企業だとどうしても内部書類の作成、保管まで十分にできていないところが多いかと思いますが、できるところから少しずつ、経理部を中心に内部書類の作成をはじめてほしいと思います。その手間をかけておくことで後の税務調査で慌てなくて済みますから。

商流と物流(森)の俯瞰力

税務調査では必ずその会社の「商流」と「物流」がどうなっているかの説明が求められます。

「商流」と「物流」って聞くとなんだか少し難しく聞こえるかもしれませんが、「商流」は発注、納品、製造、販売といった取引の流れの中での各種書類、データの流れ、「物流」とは各商流の段階における物理的なモノの流れ考えれば少しはイメージがわくかと思います。

なぜ「商流」と「物流」が調査で問われるかといえば、限られた調査期間の最初に会社の全体像を俯瞰することで、税務上問題となりそうな部分をあぶりだすためでしょう。

会社の経理部はどうしても「商流」や「物流」といった会社全体の森を見ず、交際費がどうとか消費税コードがどうとかいった木に目が行きがちで、森から見ないとわからない潜在的な問題点が取り除けていないケースが多いです。

経理部に求められる俯瞰力

税務調査対策のためだけにという意味ではなく、やはり会社の経理部は会社全体の「商流」と「物流」をしっかり把握しておく必要があると思います。

ここが単に資格(例えば日商簿記1級)持ってても、経理ができるとはいえない理由の1つでしょう。

新人経理マン教育の1つとして、まずは会社の各部門をOJTで回らせて会社の全体像を把握させるというものがありますが、これは経理部に求められる俯瞰力を植え付けるためだと思います。

経理という仕事には、1つ1つの仕訳を丁寧に切るといった繊細さに加え、会社全体を俯瞰する俯瞰力が求められます。この俯瞰力の方は資格試験の勉強では補えない部分でどうしても実務経験がものをいいます。

商流と物流はバラバラに見ないこと

会社全体を俯瞰する、すなわち、商流と物流を把握するさいにこれらを別々に見ないことが重要です。

経理部ではどうしても商流(取引の過程で生じる書類やデータ)に目が行きがちで現場でのモノの流れに目が行きにくいです。

取引の各段階、製造工程の各段階でモノがどのように流れ、どこにあるのかが把握できていないと例えば、棚卸資産の計上漏れといった税務リスクを軽減することはできません。

おわりに

元経理マンの私も上記のような俯瞰力が十分に足りていなかったなと過去の自分に対する反省がありますが、そういった自身の反省も踏まえて、今税理士としてお客様の会社と接する際には、会社全体の商流と物流を把握するように心がけています。

商流と物流を図に落とし込んで眺めてみることでここおかしいな?という気付きが生まれます。