相続税や贈与税における財産評価のルールブックである財産評価基本通達の24-6に「セットバックを必要とする宅地の評価」が定められています(以下赤字部分と青字部分は筆者が加筆。以下、セットバック通達という。)。
24-6 建築基準法第42条((道路の定義))第2項に規定する道路に面しており、将来、建物の建替え時等に同法の規定に基づき道路敷きとして提供しなければならない部分を有する宅地の価額は、その宅地について道路敷きとして提供する必要がないものとした場合の価額から、その価額に次の算式により計算した割合を乗じて計算した金額を控除した価額によって評価する。
(算式)
出典:財産評価基本通達24-6
セットバックって何?という方はこれの通達自体が何を言っているのかわからないと思いますので、簡単に解説すると、建築基準法第42条第2項道路に接する宅地は、その道路中心線から左右に2mずつ後退した線が道路境界とみなされ、将来建物の建替え等を行う場合には、その境界線まで後退しなければならず、これをセットバックといいます。
つまり、将来道路として提供しなければならないため、その道路として提供しなければならない部分の減価分を上記通達では7割としているということです。
2項道路の確認
上記のセットバック通達の適用要件は以下2点です。
①建築基準法第42条第2項道路(通称、2項道路という)に面していること(赤字部分)
②将来、建物の建替え時等に同法の規定に基づき道路敷きとして提供しなければならない部分を有する宅地であること(青字部分)
このうち①の要件の確認は、通常、役所調査で確認します。
具体的には調べている土地の所在地の役所を訪問して、建築指導課等の部門で調べたい道路の建築基準法上の取扱いを確認するという流れが一般的です。自治体(都心部)によっては、HPで建築基準法上どの道路に該当するかまで情報公開しており、役所に行かずとも確認できるところもありますが、地方では役所に行かないと確認できないことが多いです。
事前に机上調査の段階で公図をみて道路距離を概算して4m未満であれば、これ2項道路かな?っていう具合にある程度推測はできますが、確定はできないのでやはり役所調査は必要です。
セットバック済みか否かの確認
上記②の要件の確認は、現時点で建物が建っているのであればその建築確認関係書類を確認したり、あとは、現況調査をしたりすることで確認できると思います。
セットバック面積の算出
最後に、①②いずれの要件も満たしてセットバック通達の適用有となったら、道路として提供しなければならない部分の面積を計算しないといけません。
この計算において活用できるのが、道路台帳(自治体が公道を管理している台帳)です。道路台帳も役所調査で合わせて入手するのが一般的かと思いますが、こちらも都心部の自治体ではHPで公開しているところもあります。
道路台帳のいいところは、道路の幅員が記載されているところです。すなわち、2項道路の幅員が3mとわかれば、セットバック距離は、
(4m-3m)÷2=0.5m※
と計算できます。セットバック距離が計算できれば、あとは2項道路に接している間口を乗ずればセットバック部分の面積の計算ができます。
セットバック部分の面積計算イメージ図
※もちろん、もう少し複雑な論点(道路の中心線はどこか。片側水路等の場合、一方のみセットバックしなければならない場合等)があり、セットバック距離の計算には注意を要するところはありますが、ここでは話を簡単にするため、詳細は割愛しています。
いずれにしても道路幅員の情報は入手必須なので、道路台帳を活用する、現地で幅員を測る等する必要があります。
おわりに
以上、セットバック通達をざっと解説しましたが、要は机上調査だけでは適用可否の要件判断もできないことが多いので、やはりちゃんと役所調査等をしないとダメというところですね。