ご自身の会社の経理部に勘定科目処理マニュアルありますか?

今回は主に経理マン向けの記事になりますが、ご自身の会社の経理部に勘定科目処理マニュアルはありますか?

いきなり質問からはじめてしまいましたが、勘定科目処理マニュアルという正式名称があるわけではなく、要は、各勘定科目別にどのような取引の際に使用するのかがまとめられたマニュアルを指します。

勘定科目処理マニュアルのメリット

勘定科目処理マニュアルがあることによるメリットとして私が特に強調したいのは以下の通りです(他にもメリットはありますが)。

メリット 期待できる効果
各科目ごとの月別比較・年度別比較可能性の担保 各経理マンごとに勘定科目の選択基準がバラバラで、いくら各科目ごとに月別比較・年度別比較してもその増減が全く説明できないという事態を防げる(例えば、同じ取引について、ある経理マンは雑費で処理、別の経理マンは消耗品で処理という事態を防げる)。
ベテラン経理マンの急な退職により経理業務がストップするリスクの軽減 勘定科目処理マニュアルに限ったことではありませんが、各経理業務別のマニュアルが作成されていれば、ベテラン経理マンの急な退職による経理業務の停止リスクにも備えることができる。
新人経理マンの業務レベルの担保 新人経理マンに十分なOJT期間が取れない場合でも、しっかりとしたマニュアルがあれば最低限の業務レベルは担保できる。
頻度は少ないが取引金額が大きなイレギュラー取引の仕訳処理 毎月発生するようなルーチン取引は、会計システムにエントリーする仕訳フォームを定型化したり、会計システム側の設定をいじることで対応可能な部分が多いですが、頻度は少ないが取引金額が大きなイレギュラーな取引は仕訳ミスが多く、また仕訳をも違えると損益に与えるインパクトも大きいのでこれをマニュアルに落とし込むことで未然に防げる。

マニュアル作成と更新は経理業務の1つ

勘定科目処理マニュアル以外のマニュアルもそうですが、すぐに作れるものではありませんし、一度作って終わりというものではなく常に更新をしていかなければなりません。作成・更新の手間がかかるのでこういったマニュアルが作成されていない会社様が多いのではないかと思います。

うちは顧問税理士に会計データをチェックしてもらっているから大丈夫という会社様も多いと思いますが、先生は24時間365日ずっとチェックしていてくれてるわけではないですよね。

税理士の私が言うのもなんですが、会社の会計データを常にチェックできる体制にあるのは税理士ではなく、経理部の皆さんだと思います。社内で起きている様々な取引についてスピーディーに情報収集できるのも税理士ではなく経理部の皆さんなので、勘定科目処理マニュアルを作って更新していけるのもほかならぬ経理部の皆さんなのです。

自分が退職する時になってはじめて後任にマニュアルを作ってあげるのではなく、是非経理部として一丸となってマニュアル作成に取り組んでもいいのではないかと思います。

勘定科目処理マニュアル作成時のアドバイス

私はお客様が勘定科目処理マニュアルを作成する際にいろいろなアドバイスをさせていただくことを得意としています。お客様ごとに固有のアドバイスはありますが、一般的に言えることとして、このようなマニュアルをはじめて作成する際には、是非現状の勘定科目の使い方の見直しを併せて行うことをお勧めしています。

例えば、ずっと昔から「消耗品費」と「事務費」という科目を使っているけど、よくよく考えれば今特にこの2つの科目に区別する必要性がないので今後は「消耗品費」に統一した方がいいというケースもあります。

あと、せっかく勘定科目処理マニュアルを作るのであれば、科目別に消費税コードの処理方法も併せて記載することをお勧めします(特に損益科目について)。日商簿記2級や1級保持者で仕訳は切れても消費税コードを間違えることは多々ありますので。「会計の知識がある=経理ができる」という等式は成り立ちません。

AIと経理業務について~雑感~

今後AIが経理業務の一翼を担ってくるわけですが、経理業務の一部を人からAIへバトンタッチすることを想定してもこのようなマニュアルを作成することのメリットはあると考えています。

例えば、AIに過年度の大量の仕訳データや総勘定元帳を読み込ませて学習させる場合を想定しても、肝心の仕訳データや総勘定元帳に統一感がなく、ちぐはぐな処理がされているようですとAIもフル活用できないのではないかと思います。それでも正しい仕訳を切ってくれるのがAIの凄さなのかもしれませんが、どうせ学習させるなら、よい教材で学習させてあげたいなと思います。

適格請求書発行事業者以外からの課税仕入れに係る経過措置

平成35年(2023年)10月1日から適格請求書発行事業者以外からの課税仕入れについて仕入税額控除が受けられなくなります。

これは、適格請求書保存方式の下では仕入税額控除の要件として、適格請求書発行事業者のみが発行できる適格請求書等の保存が要件とされているためです。

ここで、適格請求書発行事業者以外の者として具体的にはどういう者が該当するかというと、以下の3者が該当するとされています(消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&AのQ64参照)

適格請求書発行事業者以外の者
➀ 消費者
② 免税事業者
③ 登録を受けていない課税事業者

適格請求書発行事業者の登録を受けると消費税の納税義務が発生するわけですが、③はもともと課税事業者なのであえて登録を受けないというケースは少ないのではないかと思います。

そうすると、タイトルにある「適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れに係る経過措置」は主に②の免税事業者に配慮した措置であるといえます。

すなわち、免税事業者からの課税仕入れについて、平成35年(2023年)10月1日から仕入税額控除を認めないこととすると、免税事業者が取引から排除されるなど経済的に影響が大きいのでそれを緩和する措置という感じでしょう。

経過措置の具体的内容は以下の通り。平成35年(2023年)10月1日から急に仕入税額控除を認めなくするのではなく、段階的に認めなくする措置になります(消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&AのQ64の表に一部加筆)。

期間 仕入税額控除可能割合
平成35年(2023年)10月1日から平成38年(2026年)9月30日 仕入税額相当額の 80%は仕入税額控除可
平成38年(2026年)10月1日から平成41年(2029年)9月30日 仕入税額相当額の 50%は仕入税額控除可
平成41年(2029年)10月1日以降 仕入税額控除不可

免税事業者側にとってみれば、急に取引から排除されるリスクなどが無くなってよかったのかもしれませんが、免税事業者から課税仕入れを受ける側からしたら免税事業者からの課税仕入れと適格請求書発行事業者からの課税仕入れを6年間も分けて管理しないといけない手間が増えますね。

各社の会計ソフト消費税改正バージョンアップ版で、上記のような80%仕入税額控除の税コード、50%仕入税額控除の税コードなんかが用意されていればそれを使うことで区分できると思いますが、そうでなければ何かしらの集計方法を考えないといけないですね(こうした人力の手間を減らすようなソフト(AI)が出てくる可能性も高いですが)。

さらに、80%仕入税額控除や50%仕入税額控除の適用を受けるには一定の帳簿及び請求書等の保存要件(手続要件)も満たす必要があるのでそこも注意を要します。