グループ経営における経営指導料のあり方③ 平12.2.3東京地裁を踏まえて

グループ経営における経営指導料のあり方と題して、以下の記事で書いてきましたが、今回が最終回になります。

今回の記事をいきなり読んでもよくわからないと思いますので、できれば以下の記事を読んだうえで今回の記事を読んでいただければと思います。

グループ経営における経営指導料のあり方① 平12.2.3東京地裁を踏まえて

グループ経営における経営指導料のあり方② 平12.2.3東京地裁を踏まえて

まずは、『平12.2.3東京地裁TAINSコード:Z246-8578(以下、裁判例という。)』における裁判所の判断から見ていこうと思います。

裁判所の判断

税務署の主張や納税者の主張については、私が思う重要なポイントをまとめてご紹介しましたが、裁判所の判断部分については、原文そのまま以下にきさいします。

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提供される役務が市場性を有さず、客観的な価格が形成されていない場合、また、提供される役務が様々な内容を含むため個々具体的な役務の提供に対する対価を個別に観念し難い場合、役務提供者において当該役務を提供するのに必要な費用の額(以下「提供経費」という。)をもって、当該役務の価値を判断する基礎とすることは合理的な方法ということができるが、提供者における利益ないし報酬の部分も役務の対価として含まれてしかるべきことからすると、提供される役務の価値が、提供経費に尽きるものではないことは明らかである。

特に、当該役務の提供が提供者の主たる活動になっている場合、提供した役務の価値が提供経費を大幅に上回る場合などにおいては、利益ないし報酬部分を加算しないことは不合理というべきである。

そして、独立企業間で役務の提供に対する利益ないし報酬部分をどのように定めるかは、私的自治の原則により基本的には当該企業が契約により自由に定めるところにゆだねられているものというべきである。

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つまり、税務署が主張した費用の積上げ方式(コストアプローチ的)な方法についても合理的ではあると配慮しつつも、付加価値部分(利益ないし報酬部分)も含まれるべきとしており、その付加価値部分の決め方は、基本的には契約による(私的自治の原則)としています。

ただし、なんでもかんでも契約で決めさえすれは、税務上なんの問題もない(寄付金認定リスクなし)というわけではなく、裁判所は以下のように続けています。

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提供される役務に対して支払われる対価の額が、役務提供者における提供経費を超えているからといって、当該超える部分が直ちに寄付金に該当すると速断することはできず、

右超える部分が寄付金に該当するかどうかは、契約当事者である企業間の関係、当該役務提供契約において定められている役務の内容、対価の決定方法の合理性、実際の役務提供内容、提供される役務の被提供者における便益の大きさ、役務と右便益との関係の直接性、提供者において当該役務の提供がその業務に占めている地位等に照らして、

役務の提供の対価が、独立企業間において行われる同種の契約で設定される対価の水準と著しく乖離していて企業間の特殊な関係に基づく租税回避のための価格操作と認めるべきものかどうかによって、これを判断すべきものと解される。

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寄付金該当性の判断ロジックとして、中段に記載の各種様々な事実認定を踏まえて、最後の、企業間の特殊な関係に基づく租税回避のための価格操作と認められるかどうかで判断するというところは、私個人的にも納得なのですが、その前文の、役務の提供の対価が、独立企業間において行われる同種の契約で設定される対価の水準と著しく乖離していて、というところは実務上判断が困難なケースが多いと思いました。

そのそも、提供される役務が市場性を有さず、って裁判所もはじめにいっているとおり、問題となっている親子会社間の経営指導契約と同種の契約がなく、対価水準が不明なんじゃないの?という疑問がわいてきますし、実務上もそういったケースがほとんどだと思います。

ただし、今回の裁判例については、この独立企業間において行われる同種の契約があるんですね。具体的には、NPCがPKKに完全支配される前、松下電器産業との合弁であった時代に、FOB価格×1%、インボイス価格×0.5%といった算式で計算された金員をNPCから松下電器産業に支払う契約が結ばれていたんです。

そういうこともあり、各種事実認定を行った上で、独立企業間において行われる同種の契約の存在もあり、企業間の特殊な関係に基づく租税回避のための価格操作と認めるべきような不合理なものということはできないとして、寄付金に該当する部分無し(納税者の勝ち)となっています。

おわりに

以上、裁判所の判断部分を見てきましたが、経営指導料の寄付金該当性の判断ロジックとしては、主に以下の3点を検討したうえで最終判断がなされています。

①各種事実認定(契約の存在、実際の役務提供の内容など)

独立企業間において行われる同種の契約で設定される対価の水準との乖離の程度

企業間の特殊な関係に基づく租税回避のための価格操作の有無

今回の裁判例を踏まえて、例えば実際に経営指導料の仕組みを導入することを検討する場合、①②は企業側の努力次第でいくらでも検討できそうですが、②については情報収集に限界があるのではないかと個人的に感じているところです。

②に直接代わる検討方法ではありませんが、税務署の主張にある費用の積上げ方式で経営指導を提供するのに要する費用がどの程度かを把握し、その積上げ費用と経営指導料の乖離の程度を検討するのも一法なのではないかと思っています。

費用の積上げ方式の金額 > 経営指導料 の場合、子会社側での経営指導料の寄付金該当性というよりも、親会社側で経営指導料の計上漏れ(回収不足)の指摘を受ける可能性もありますので。

あと、この裁判例の時代はありませんが、今は100%関係の場合、グループ法人税制がありますので、寄付金に該当した場合のグループ法人税の取扱いも検討していかないといけませんね。

経営指導料をめぐってはまだまだ私自身検討すべきことが多いテーマの1つなのでまた別の記事にでもしてアップしていこうと思います。

グループ経営における経営指導料のあり方② 平12.2.3東京地裁を踏まえて

先の記事(グループ経営における経営指導料のあり方① 平12.2.3東京地裁を踏まえて)では、経営指導料がなぜ寄付金認定されやすいのか、寄付金認定されやすいケースはどのような場合かについて触れました。

今回は、先の記事の最後に記載の『平12.2.3東京地裁TAINSコード:Z246-8578(以下、裁判例という。)』についてみていこうと思います。

裁判例の概要

まず、この裁判例の概要について簡単にまとめると、

フィリップスグループの現地法人として日本におけるフィリップスグループ会社の管理運営を行っていたPKK社が、その子会社NPCから経営指導料を受領しており、NPCが支払った当該経営指導料(※1)のうち一部(※2)について税務署が寄付金認定を行ったというものです。

(※1)NPCがPKKに支払っていた経営指導料は以下の算式で計算されています。

経営指導料=NPCの年間売上総額(予算)×1%

(※2)税務署が寄付金認定したのは上記経営指導料のうち、NPCが負担すべき管理費用相当額を超える部分です。この管理費用相当額については、PKK側の費用をベースに、従業員給与比率や従業員数比率を用いた簡便法的な案分計算でNPCが負担すべき費用相当額が算出されています。

税務署(国)の主張概要

税務署の主張について、簡単に私がポイントだと思う部分をまとめると、以下の通りです。

①管理部門を持たないNPCの管理業務遂行に対する費用負担額は、経営指導料として認める(寄付金認定しない)

②①の金額を超える部分については、具体的な役務提供の事実が認められず、その経営指導料の計算根拠及び負担理由並びにその支払金額の相当性が不明なため対価性を欠き、寄付金認定する

複数年度で寄付金認定されているのですが、単年度で寄付金認定額は約9億~11億といった金額感です。個人的には金額的にはかなり大きいというイメージを持ちました。

納税者の主張概要

納税者側もいろいろな角度から主張を繰り広げていますが、簡単に私がポイントだと思う部分をまとめると、以下の通りです。

①経営指導料について、PKKとNPC間で2回覚書が結ばれている。当初の覚書作成時にはフィリップスグループ外の松下電器産業が同意したうえで覚書が作成されているため、経営指導料の率は恣意的に決定されたものではない。

②フィリップスグループの最終目的は、フィリップス製品の売上拡大に基づく利益追求であり、PKKの経営指導も最終的にはNPCの製品売上増加を目的とした役務提供であり、PKKの役務の価値の評価は、NPCの売上の増減という形で現れる。なので、経営指導料を子会社の売上高ベースで計算する方法は合理的である。

経営指導料の率(1%)の部分について、恣意的ではないと主張し(上記①)、率を乗じる基に子会社の売上高を用いることの合理性を主張することで(上記②)、経営指導料の計算方法の妥当性を主張しているものと考えられます。

なお、納税者は、役務提供の実態についても事細かに主張しており、その役務提供により受ける利益は、単に費用の積上げでは評価できないとも主張しており、税務署の費用積上げ方式を否定してます。

雑感

ここまで、税務署の主張と納税者の主張を読んだところでの私の感想としては、納税者の主張は経営指導料の計算式(子会社の売上高×率)について説明はしているものの、定性的な説明にとどまってるなと感じました。

今回の事例は、税務署の主張と納税者の主張で程度の差はあれ、経営指導の実態はあるにはあるので、あとはそれをどう金額で表現するかというところが難しいところです。

経営指導料の金額算定に対するアプローチの方法としては、私の頭の中では以下3方式が思い浮かびますが、直接これら3つの方式が裁判例中で記載されているわけではありません。

①コストアプローチ(役務提供にかかった費用に着目し、それを積上げる方式)

②マーケットアプローチ(親会社以外で同様の役務提供サービスを行っている第三者が市場に複数あり、それらの金額を比較考量する方式)

③インカムアプローチ(役務提供の結果得られる利益を基に計算する方式)

ただ、税務署は①を、納税者は③に主眼を置いているのかなということは読んでみて感じたところになります。今回の経営指導は親会社と子会社という関係でかなり内容の個別性が強く、第三者に同様の経営指導を求めるということができないので②の方法はないかなと思います。

最後に次回の記事で裁判所の判断を紹介して、この事例分析を踏まえてまとめていこうと思います。