印紙税の第1号の1文書にある「不動産の譲渡に関する契約書」には、売買契約書のみならず、交換契約書も含まれる点は前に記事でも書いた通りです(印基通第13条)。
不動産の交換契約って不動産業界を除き、実務でもそんなに出くわす頻度は高くないと思いますが、印紙税法の世界で交換契約書について面白い取扱いがあります。
交換契約書の記載金額
それは、交換契約書の記載金額の論点です。
印紙税法基本通達第23条の交換契約の部分を抜粋すると以下の通り。
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(契約金額の意義)
第23条 課税物件表の第1号、第2号及び第15号に規定する「契約金額」とは、次に掲げる文書の区分に応じ、それぞれ次に掲げる金額で、当該文書において契約の成立等に関し直接証明の目的となっているものをいう。(平元間消3-15改正)
(1) 第1号の1文書及び第15号文書のうちの債権譲渡に関する契約書 譲渡の形態に応じ、次に掲げる金額
イ (省略)
ロ 交換 交換金額
なお、交換契約書に交換対象物の双方の価額が記載されているときはいずれか高い方(等価交換のときは、いずれか一方)の金額を、交換差金のみが記載されているときは当該交換差金をそれぞれ交換金額とする。
(例) 土地交換契約書において
1 甲の所有する土地(価額100万円)と乙の所有する土地(価額110万円)とを交換し、甲は乙に10万円支払うと記載したもの (第1号文書)110万円
2 甲の所有する土地と乙の所有する土地とを交換し、甲は乙に10万円支払うと記載したもの (第1号文書)10万円
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書き方1つで変わる印紙税負担
上記通達中の(例)によれば、
交換土地双方の評価額が記載されている1のパターンでは、高い方(110万円)が記載金額。
一方で交換差金のみ記載されている2のパターンでは、交換差金(10万円)が記載金額。
どちらのパターンでも契約の内容(効果)は同じなのに書き方が少し違うだけで記載金額が変わる、すなわち印紙負担が変わるわけです。
通達の(例)はまだ評価額がそれほど大きくないからいいですが、億単位の評価額の土地の交換であればパターン1、2の記載方法の違いだけで印紙負担が何倍もの差になります。
契約内容(効果)は変わらないので、印紙負担だけ考えれば交換差金だけ書く方が有利となります。
こんな嘘みたいなほんとのことが印紙税法の世界にはあふれてます。
契約書作成前の一工夫が印紙税負担の明暗を分けます。