消費税の区分記載で印紙税節税

印紙税の実務に関わる方ならば知っている方も多いかと思いますが、契約書や領収書で消費税を区分記載すると印紙税の節税になると聞いたことがあるかもしれません。

根拠となる個別通達

根拠となる個別通達の抜粋は以下の通りです。

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消費税法の改正等に伴う印紙税の取扱いについて(平成元年3月10日付間消3-2・最終改正 平成26年1月21日付課消3-1)

1 契約書等の記載金額

印紙税法(昭和 42 年法律第 23 号。以下「法」という。)別表第1の課税物 件表の課税物件欄に掲げる文書のうち、次の文書に消費税及び地方消費税の 金額(以下「消費税額等」という。)が区分記載されている場合又は税込価格 及び税抜価格が記載されていることにより、その取引に当たって課されるべ き消費税額等が明らかである場合には、消費税額等は記載金額(法別表第1 の課税物件表の適用に関する通則4に規定する記載金額をいう。以下同じ。) に含めないものとする。

⑴ 第1号文書(不動産の譲渡等に関する契約書)

⑵ 第2号文書(請負に関する契約書)

⑶ 第 17 号文書(金銭又は有価証券の受取書)

(注)1 「消費税額等が区分記載されている」とは、その取引に当たって課 されるべき消費税額等が具体的に記載されていることをいい、次のい ずれもこれに該当することに留意する。

    イ 請負金額 1,080 万円 税抜価格 1,000 万円 消費税額等 80 万円 

    ロ 請負金額 1,080 万円 うち消費税額等 80 万円

    ハ 請負金額 1,000 万円 消費税額等 80 万円 計 1,080 万円 

2 「税込価格及び税抜価格が記載されていることにより、その取引に 当たって課されるべき消費税額等が明らかである」とは、その取引に 係る消費税額等を含む金額と消費税額等を含まない金額の両方を具体的に記載していることにより、その取引に当たって課されるべき消費 税額等が容易に計算できることをいい、次の場合がこれに該当することに留意する。 

 請負金額 1,080 万円 税抜価格 1,000 万円

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つまり、➀消費税を区分記載→②印紙税の記載金額から除かれる→③記載金額に応じて税率の上がる印紙税の節税になるというロジックです。

区分記載の方法に注意

上記個別通達だけ読むとスルーしてしまうのですが、例えば以下のような記載では消費税を区分記載したことにはならず、記載金額は1,080万円となってしまいます。

請負金額 1,080万円(消費税等込み)

請負金額 1,080万円(消費税等8%込み)

(消費税等8%込み)の記載でも「×8/108」すれば消費税等の額を計算できるから記載金額から除いてもいいのではないかと個人的には思ってますが、個別通達には、消費税等が具体的に記載されているか、税込と税抜が両方明記されている場合しか書いてないので仕方ないですね。乗除計算はNGということです。国税庁タックスアンサー(消費税等の額が区分記載された契約書等の記載金額)でも注意喚起されています。

それにしても、消費税を区分記載すれば印紙税が節税できるとだけ聞いてしまうとここまで注意がいかないのでここも印紙税の怖いところだなと感じてます。

今後、消費税率8%から10%になれば消費税を区分記載できているか否かで印紙税の記載金額への影響も今より大きくなると思います。

印紙税法の世界における交換契約書の記載金額

印紙税の第1号の1文書にある「不動産の譲渡に関する契約書」には、売買契約書のみならず、交換契約書も含まれる点は前に記事でも書いた通りです(印基通第13条)。

不動産の交換契約って不動産業界を除き、実務でもそんなに出くわす頻度は高くないと思いますが、印紙税法の世界で交換契約書について面白い取扱いがあります。

交換契約書の記載金額

それは、交換契約書の記載金額の論点です。

印紙税法基本通達第23条の交換契約の部分を抜粋すると以下の通り。

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(契約金額の意義)

第23条 課税物件表の第1号、第2号及び第15号に規定する「契約金額」とは、次に掲げる文書の区分に応じ、それぞれ次に掲げる金額で、当該文書において契約の成立等に関し直接証明の目的となっているものをいう。(平元間消3-15改正)

(1) 第1号の1文書及び第15号文書のうちの債権譲渡に関する契約書 譲渡の形態に応じ、次に掲げる金額

イ (省略)

ロ 交換 交換金額
  なお、交換契約書に交換対象物の双方の価額が記載されているときはいずれか高い方(等価交換のときは、いずれか一方)の金額を、交換差金のみが記載されているときは当該交換差金をそれぞれ交換金額とする。

(例) 土地交換契約書において

1 甲の所有する土地(価額100万円)と乙の所有する土地(価額110万円)とを交換し、甲は乙に10万円支払うと記載したもの (第1号文書)110万円

2 甲の所有する土地と乙の所有する土地とを交換し、甲は乙に10万円支払うと記載したもの (第1号文書)10万円

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書き方1つで変わる印紙税負担

上記通達中の(例)によれば、

交換土地双方の評価額が記載されている1のパターンでは、高い方(110万円)が記載金額。

一方で交換差金のみ記載されている2のパターンでは、交換差金(10万円)が記載金額。

どちらのパターンでも契約の内容(効果)は同じなのに書き方が少し違うだけで記載金額が変わる、すなわち印紙負担が変わるわけです。

通達の(例)はまだ評価額がそれほど大きくないからいいですが、億単位の評価額の土地の交換であればパターン1、2の記載方法の違いだけで印紙負担が何倍もの差になります。

契約内容(効果)は変わらないので、印紙負担だけ考えれば交換差金だけ書く方が有利となります。

こんな嘘みたいなほんとのことが印紙税法の世界にはあふれてます。

契約書作成前の一工夫が印紙税負担の明暗を分けます。