グループ経営における経営指導料のあり方① 平12.2.3東京地裁を踏まえて

グループ経営されている会社間で、税務上特に論点となることの1つに、『経営指導料のあり方』があります。

もう少し具体的にいうと、子会社が親会社に支払う経営指導料のうち一部若しくは全部が対価性がなく、寄付金認定されてしまうリスクがあるというものです。

どんな場合に寄付金認定されやすいか

そもそも経営指導料がなぜ寄付金認定されやすいか、言い換えれば、どんな場合に寄付金認定の指摘を税務署から受けやすいかについて少し触れておきたいのですが、私が思うケースは以下の通りです。

①そもそも親会社から子会社に対する経営指導等の実態がない、もしくは、あいまいで客観的なエビデンスをもって第三者に経営指導等の実態の主張ができないケース

②親会社から子会社への経営指導等の実態はあるが、客観的エビデンス(大前提として経営指導に関する契約書など)がないケース

③親会社から子会社への経営指導等の実態はあり、客観的エビデンス(大前提として経営指導に関する契約書)もあるが、その金額の算定根拠が不明であり、実費を超えていると判断されるケース

①が一番まずい状態なわけですが、①②は経営指導という役務提供の実態がない若しくは不明確であるため、子会社が親会社へ支払う経営指導料の対価性がないと判断されてしまいます。この場合、経営指導料のうちいくらが寄付金ということではなく、その全額が寄付金認定されるリスクがあるでしょう。

一方で③については、①②とは違い、経営指導等の実態とエビデンスはありますので、経営指導料の全額が寄付金認定されるというリスクは少ないですが、その金額の算定根拠等が問題となり、親会社で経営指導業務に要する実費を上回る部分が過大な経営指導料として寄付金認定されるリスクがあるというものです。

裁判例から学ぶ

以上、経営指導料が寄付金認定されるケースについて①②③を書きましたが、主にケース③について争われた裁判例としてタイトルに記載の『平12.2.3東京地裁 TAINSコード:Z246-8578』があります。

少し古い裁判例ではありますが、経営指導料について考える際には非常に勉強になる事例だと思います。

今後別記事にてこの裁判例について私が読んだ感想を交えて書いていこうと思います。

中小企業グループの経理体制構築

中小企業に限りませんが、親会社と子会社といったように、複数の企業グループで経営・ビジネスを行っている企業はたくさんあります。

そんな企業グループにおける経理体制は大きく以下3パターンに分かれると思います。

パターン1 親会社が各子会社の経理業務を全て代行している
パターン2 各子会社にはそれぞれ経理部門があり、経理業務は子会社で完結できる
パターン3 親会社が各子会社の経理業務の一部を代行している

中小企業グループ経理体制構築の留意点

中小企業グループで上記パターン2の経理体制の場合は留意しないといけないことがあります。

中小企業の場合、なかなか経理の人材採用まで十分に行われていないケースが多く、各子会社で経理部門があるといっても経理担当者1名なんてことは普通にある状況でしょう。

各子会社に経理担当者1名といった場合、親会社主体で定期的に各子会社の経理担当者を集めて勉強会や会議を実施する等しないと、各子会社の会計方針がバラバラになる可能性が高いです。

各子会社の会計方針がバラバラだと、同業種の各子会社間であっても業績比較が十分に行えません。結果的にグループ経営が十分になされない可能性があります。

もちろん、各子会社もそれぞれ別会社なので、細部まで全部同じ会計方針である必要はありませんが、同業種の子会社なら大枠(個別注記表に記載の会計方針レベル)は揃え、使用する勘定科目などを統一しておいた方がよいでしょう。そのためにも、グループ全社の経理担当者が集まっての打ち合わせが必要になってきます。

おわりに

パターン2が問題あるならパターン1に変えればいいんじゃない?って思う方もいるかもしれませんが、親会社で子会社の経理業務まで全て行う体制を構築するには急にはできません。

親会社での経理担当者の人材確保、子会社の経理担当者の本社への転籍、システムの見直し、帳簿書類の移管等やらなければならないことがたくさんありますので、段階的に親会社へ経理業務を移管することになるでしょう。

また、パターン1とパターン2の折衷タイプとしてパターン3もあり得ますが、パターン3の場合はどこまで親会社が代行するのかしっかりと線引しておく必要があり、子会社も一部経理業務を行うことから親会社との連携が重要になってきます。

いずれにしても単なる事務処理屋としての経理ではなく、しっかりとグループ内でコミュニケーションをとっていかないと強い経理にはなりません。