グループ経営における経営指導料のあり方② 平12.2.3東京地裁を踏まえて

先の記事(グループ経営における経営指導料のあり方① 平12.2.3東京地裁を踏まえて)では、経営指導料がなぜ寄付金認定されやすいのか、寄付金認定されやすいケースはどのような場合かについて触れました。

今回は、先の記事の最後に記載の『平12.2.3東京地裁TAINSコード:Z246-8578(以下、裁判例という。)』についてみていこうと思います。

裁判例の概要

まず、この裁判例の概要について簡単にまとめると、

フィリップスグループの現地法人として日本におけるフィリップスグループ会社の管理運営を行っていたPKK社が、その子会社NPCから経営指導料を受領しており、NPCが支払った当該経営指導料(※1)のうち一部(※2)について税務署が寄付金認定を行ったというものです。

(※1)NPCがPKKに支払っていた経営指導料は以下の算式で計算されています。

経営指導料=NPCの年間売上総額(予算)×1%

(※2)税務署が寄付金認定したのは上記経営指導料のうち、NPCが負担すべき管理費用相当額を超える部分です。この管理費用相当額については、PKK側の費用をベースに、従業員給与比率や従業員数比率を用いた簡便法的な案分計算でNPCが負担すべき費用相当額が算出されています。

税務署(国)の主張概要

税務署の主張について、簡単に私がポイントだと思う部分をまとめると、以下の通りです。

①管理部門を持たないNPCの管理業務遂行に対する費用負担額は、経営指導料として認める(寄付金認定しない)

②①の金額を超える部分については、具体的な役務提供の事実が認められず、その経営指導料の計算根拠及び負担理由並びにその支払金額の相当性が不明なため対価性を欠き、寄付金認定する

複数年度で寄付金認定されているのですが、単年度で寄付金認定額は約9億~11億といった金額感です。個人的には金額的にはかなり大きいというイメージを持ちました。

納税者の主張概要

納税者側もいろいろな角度から主張を繰り広げていますが、簡単に私がポイントだと思う部分をまとめると、以下の通りです。

①経営指導料について、PKKとNPC間で2回覚書が結ばれている。当初の覚書作成時にはフィリップスグループ外の松下電器産業が同意したうえで覚書が作成されているため、経営指導料の率は恣意的に決定されたものではない。

②フィリップスグループの最終目的は、フィリップス製品の売上拡大に基づく利益追求であり、PKKの経営指導も最終的にはNPCの製品売上増加を目的とした役務提供であり、PKKの役務の価値の評価は、NPCの売上の増減という形で現れる。なので、経営指導料を子会社の売上高ベースで計算する方法は合理的である。

経営指導料の率(1%)の部分について、恣意的ではないと主張し(上記①)、率を乗じる基に子会社の売上高を用いることの合理性を主張することで(上記②)、経営指導料の計算方法の妥当性を主張しているものと考えられます。

なお、納税者は、役務提供の実態についても事細かに主張しており、その役務提供により受ける利益は、単に費用の積上げでは評価できないとも主張しており、税務署の費用積上げ方式を否定してます。

雑感

ここまで、税務署の主張と納税者の主張を読んだところでの私の感想としては、納税者の主張は経営指導料の計算式(子会社の売上高×率)について説明はしているものの、定性的な説明にとどまってるなと感じました。

今回の事例は、税務署の主張と納税者の主張で程度の差はあれ、経営指導の実態はあるにはあるので、あとはそれをどう金額で表現するかというところが難しいところです。

経営指導料の金額算定に対するアプローチの方法としては、私の頭の中では以下3方式が思い浮かびますが、直接これら3つの方式が裁判例中で記載されているわけではありません。

①コストアプローチ(役務提供にかかった費用に着目し、それを積上げる方式)

②マーケットアプローチ(親会社以外で同様の役務提供サービスを行っている第三者が市場に複数あり、それらの金額を比較考量する方式)

③インカムアプローチ(役務提供の結果得られる利益を基に計算する方式)

ただ、税務署は①を、納税者は③に主眼を置いているのかなということは読んでみて感じたところになります。今回の経営指導は親会社と子会社という関係でかなり内容の個別性が強く、第三者に同様の経営指導を求めるということができないので②の方法はないかなと思います。

最後に次回の記事で裁判所の判断を紹介して、この事例分析を踏まえてまとめていこうと思います。

 

 

グループ経営における経営指導料のあり方① 平12.2.3東京地裁を踏まえて

グループ経営されている会社間で、税務上特に論点となることの1つに、『経営指導料のあり方』があります。

もう少し具体的にいうと、子会社が親会社に支払う経営指導料のうち一部若しくは全部が対価性がなく、寄付金認定されてしまうリスクがあるというものです。

どんな場合に寄付金認定されやすいか

そもそも経営指導料がなぜ寄付金認定されやすいか、言い換えれば、どんな場合に寄付金認定の指摘を税務署から受けやすいかについて少し触れておきたいのですが、私が思うケースは以下の通りです。

①そもそも親会社から子会社に対する経営指導等の実態がない、もしくは、あいまいで客観的なエビデンスをもって第三者に経営指導等の実態の主張ができないケース

②親会社から子会社への経営指導等の実態はあるが、客観的エビデンス(大前提として経営指導に関する契約書など)がないケース

③親会社から子会社への経営指導等の実態はあり、客観的エビデンス(大前提として経営指導に関する契約書)もあるが、その金額の算定根拠が不明であり、実費を超えていると判断されるケース

①が一番まずい状態なわけですが、①②は経営指導という役務提供の実態がない若しくは不明確であるため、子会社が親会社へ支払う経営指導料の対価性がないと判断されてしまいます。この場合、経営指導料のうちいくらが寄付金ということではなく、その全額が寄付金認定されるリスクがあるでしょう。

一方で③については、①②とは違い、経営指導等の実態とエビデンスはありますので、経営指導料の全額が寄付金認定されるというリスクは少ないですが、その金額の算定根拠等が問題となり、親会社で経営指導業務に要する実費を上回る部分が過大な経営指導料として寄付金認定されるリスクがあるというものです。

裁判例から学ぶ

以上、経営指導料が寄付金認定されるケースについて①②③を書きましたが、主にケース③について争われた裁判例としてタイトルに記載の『平12.2.3東京地裁 TAINSコード:Z246-8578』があります。

少し古い裁判例ではありますが、経営指導料について考える際には非常に勉強になる事例だと思います。

今後別記事にてこの裁判例について私が読んだ感想を交えて書いていこうと思います。