取引相場のない株式の評価から見えてくること

「取引相場のない株式の評価」という書き方をするとなんだか難しく思われる方もいるかもしれませんが、財産評価基本通達に基づく非上場株式の評価のことです。

財産評価基本通達というのは、相続税や贈与税の財産評価に関するルールブックのようなものであり、土地、家屋、取引相場のない株式など、各種様々な財産の評価方法が画一的に規定されています。

取引相場のない株式の株式の評価は大変

話を取引相場のない株式の評価に戻しますが、これを一度でも実務でやったことのある方ならわかると思いますが、ほんとに大変な仕事です。

取引相場のない株式の評価方法には、①原則的評価方式と②特例的評価方式(配当還元方式)の大きく2パターンに分かれてまして、①原則的評価方式では類似業種比準価額と純資産価額の計算が必要になります(ちなみに、会社規模区分が大会社なら純資産価額計算不要では?と思われる方もいるかと思い、補足しますと、株式保有特定会社や土地保有特定会社になる可能性を検討する上で純資産価額の計算が必要という意味です)。

類似業種比準価額も簡単なようで意外と難しい論点があるのですが、手間がかかるのは純資産価額の方です。

純資産価額の計算をするには、会社の全資産負債について財産評価基本通達に基づき評価していかなければなりませんので、例えば、その評価対象会社が土地をたくさん所有していたらそれを全部財産評価基本通達で評価しないといけないし、非上場の子会社株式を1社保有していれば、それも財産評価基本通達で評価しないといけませんので結果2社分の評価が必要になります。

大変だけど見えてくるものもたくさんある

以上のように、取引相場のない株式の評価(特に原則的評価方式の純資産価額)は非常に大変な仕事なのですが、その評価対象会社の全資産負債について評価するのあたり、様々な情報を収集しますので、いろいろと見えてくるものがあります。

例えば、会社所有の建物を賃貸している場合、貸家の評価減、貸家建付地の評価減の通達適用にあたり賃貸面積を調べるために、建物賃貸借契約書の確認が必要になります。ですが、建物賃貸借契約書がないなんてことがあります。どんな場合に契約書がないのかというと、例えば、親会社と子会社の契約とか、会社とオーナーの契約などが代表例です。

第三者とであれば当たり前にかわす契約書が、近しい関係にある会社や人との契約だと口頭で済まされていることがままあります。

もちろん口頭でも契約(申込と承諾)はできますが、上記のようにその土地を評価しようと思ったときに客観的情報としての契約書が得られず、正しく評価額を算出できないという問題が生じます。

見えてきた問題点は指摘

以上のように、取引相場のない株式の評価(純資産価額の評価)を通じて、会社に当然あるべき契約書がないなんてことがあります。

そして、契約書がない場合は株価評価をどうするかという論点はありますが、そういった状況に気が付いたら評価を担当した税理士は会社に当該事項を指摘・説明する必要があると思っています。

私自身も単に評価額は○○円でしたで終わるのではなく、評価の過程で気が付いた点はしっかり指摘・説明していきたいというスタンスで株価評価業務は行っています。株価評価業務は非常に大変な仕事ですが、その会社のことがよくわかるいい機会でもあると思っています。

 

地籍規模の大きな宅地(新通達)の面積要件と評価単位

相続税の財産評価基本通達上、非常に大きな改正として、平成30年1月1日以降「地籍規模の大きな宅地」の新通達20-2の創設がありました。

この新通達の創設に伴い、これまで実務上いろいろ問題のあった、いわゆる広大地通達が廃止されました。問題があったというのは、適用できると非常に大きな減額効果のある広大地通達の適用可否判断が難しく、納税者と課税庁でもめることが多かったということです。

この点、新通達である「地籍規模の大きな宅地」は適用要件が広大地通達に比べて定量的になり、適用可否判断の難易度は下げられています。

広大地通達よりも使いやすくなったとは言っても要注意なポイントはいくつかあります。

面積要件の判定における注意点

この新通達の適用要件チェックシートが国税庁より公表されています((平成30年1月1日以降用)「地積規模の大きな宅地の評価」の適用要件チェックシート)。

このチェック項目の一番最初にあるのが、面積要件であり、以下の面積以上であることが新通達の適用要件となっています。

三大都市圏に所在する宅地等 500㎡以上
上記以外の地域に所在する宅地等 1000㎡以上

一見するとこの面積要件の判定はすごく楽なように見えますが、単純に筆ごとの地籍で上記面積要件を判定するのではありません

財産評価基本通達における土地の評価全般に言えることですが、評価単位ごとに評価する(面積要件を判定する)というのが正解です。

評価単位の判定は土地評価の一番初めに行うものであり、これが正確にできていないと後の調整がいくら正しくても誤った評価額になります。そしてこの評価単位の判定には、地目判定、権利関係の確認などが必要であり、かなり難易度が高いです。

国税庁HP質疑応答事例でも、宅地の評価単位と題して13事例も取り上げられているくらいで、ここではすべてを説明しきれませんが、評価単位の判定は新通達の面積要件の判定に限らず、必ず必要な作業なので注意して行う必要があります。

おわりに

新通達の面積要件(三大都市圏500㎡以上、それ以外1000㎡以上)について、一個人が所有する土地としてはなかなかその規模のものは少ないかもしれませんが、法人が所有する土地では普通にあり得る規模だと思います。

個人所有の土地評価という論点ではなかなか新通達の出番が少ないかもしれませんが、法人所有の土地評価、すなわち、取引相場のない株式の評価では新通達の出番はかなり多いと思います。